レオパレス、疑念呼ぶ企業体質 違法建築3000棟超えへ

 
東京都中野区のレオパレス21本社

株価直近高値の4分の1

 賃貸アパート大手レオパレス21による新たな施工不良の発表で問題が拡大してから7日で1カ月が経過し、少なくとも3000棟以上が建築基準法違反となる恐れが出ている。国土交通省はレオパレスによる対応の不十分さを問題視しており、全棟改修の完了時期の前倒しを求めるなど監視を強化。一方でレオパレスが進める全物件の調査や問題物件からの住民退去の終了時期は未定で、問題解決には時間がかかりそうだ。

 ◆国交省幹部「闇深い」

 レオパレスは2月7日の発表で新たに1324棟で法令違反の疑いがあると明らかにした。国交省はすでに1895棟で建築基準法違反を認定しているうえ、全物件3万9085棟を対象とした調査も始まっており、違反物件は3000棟を超える公算が大きい。

 こうした中、国交省は同社の調査の態勢が不十分だとみて、全棟改修の完了時期をレオパレスが設定した10月から、8月に前倒しさせる異例の対応を取った。国交省幹部はレオパレスの企業体質について「闇は深い」と苦言を呈する。

 国交省がレオパレスに対応の見直しを求めたのは、今回が初めてではない。レオパレスは新たな施工不良発表時の記者会見では、原因究明を進めるための第三者委員会の設置について「現時点では考えていない」と言及。その後、2月27日に設置を発表したが、それも「国交省が設置を指示したからだ」(同省幹部)という。

 レオパレスの第三者委は18日に中間報告を公表する予定だ。施工不良が見つかっている物件は築後20年以上のものが多く、当時の担当者に対して聞き取り調査を進め、遮音性や耐火性に問題のある素材で壁や天井の工事を実施した理由などの調査を進めている。

 ◆対応後手、見えぬ解決

 一方、レオパレスは防火性に問題のある641棟の住民に対して退去も要請。しかし「住民の事情もあるので急がせるのは難しい」(同社)という現実を前に全戸調査や施工不良の工事が終了する時期は見通せない。

 レオパレスをめぐっては、入居者からの遮音性への不満が多発。土地所有者に建てさせたアパートを一括して借り上げて家賃保証することをうたった上で、入居者に転貸する「サブリース契約」のトラブルも多発している。(大坪玲央)

ウレタン使用、高音筒抜け

 レオパレス21の施工不良問題で、同社が物件の遮音性を調査したところ、特に救急車のサイレンのような高音域で音が筒抜けになる問題が見つかっていたことが分かった。建設工程での生産効率を高めようとして、部屋と部屋の間を仕切る「界壁」の内部に遮音性が低い発泡ウレタンを使ったことが要因とみられる。

 遮音性などに問題のある法令違反物件は、すでに判明している771棟からさらに増える可能性があり、業績不安から株価は昨年5月の4分の1に低迷している。

 レオパレスは昨年4月と5月に屋根裏の界壁に関する施工不良があったと発表。今年2月に新たな施工不良が明らかになり、問題が拡大した。レオパレスは調査を進める過程で昨年8月ごろに外部の事業者に依頼して調査を実施。発泡ウレタンを使った界壁の遮音性を調査したところ、救急車のサイレンなどで生じる高音域の音で特に遮音性が低いことが判明したという。

 レオパレス幹部は「工場での生産効率を高めるために、発泡ウレタンを素材にしてしまった」と話している。賃貸住宅への需要の増加に迅速に対応したい思惑もあったという。発泡ウレタンを使えば界壁を工場で生産する際のスピードが上がるが、遮音性は低くなる。レオパレスの物件では以前から、遮音性が低いことに入居者から不満が出ていた。

 レオパレスは新たな施工不良公表と同時に損失引当金として特別損失360億円を計上。このため2018年4~12月期の連結最終損益は439億円の赤字(前年同期は128億円の黒字)に転落し、通期も最終赤字となる見通しだ。前期は1株当たり年間22円だった配当も今期は無配とする。

 こうした業績の低迷に加え、ブランドイメージや入居率の低下も予想されることから、レオパレスの株価は急落している。2月18日には取引時間中に、年初来最安値の199円まで下落した。最近の取引では250円前後までは戻しているが、昨年5月につけた直近の高値1023円からは、4分の1の水準に低迷したままだ。