【5時から作家塾】次のトレンドは折りたたみスマホ!? 各社が次々に新製品を発表
「折りたためるスマートフォン」といったら、「何だ、一昔前のガラケーか」と思う人もいるかもしれない。しかし、昨今話題になっている折りたたみスマホは、ガラケーとはちょっと違う。画面を二つ折り、あるいは三つ折りにすることができ、たたむと通常のスマートフォンサイズ、広げるとタブレットとして使えるというものなのだ。
先陣を切ったのが、中国のロイヤルという企業だ。同社は米国スタンフォード大学卒の技術者が2012年に創業した新興企業で、今年1月に米国ラスベガスで開催された「CES2019」で、世界初の折りたたみスマホ「フレックスパイ」を一般公開した。画面部分を外側にして折りたたむスタイルで、たたんだ状態でも前面と背面の両方に情報を表示することができる。筆者も実際に操作してみたが、アイディアとしては面白いものの、かさばるというのか、正直言ってデザインがいまひとつという印象だった。また、フレックスパイは現時点ではまだ発売時期が発表されていない。
しかし折りたたみスマホが2019年のトレンドとなるのは確実だろう。
中国・韓国メーカーに動き続々
まず世界のスマホ市場シェア首位の韓国サムスンが、2月に米国サンフランシスコで開催したイベントにおいて、折りたたみスマホ「ギャラクシー・フォールド」を発表した。フレックスパイとは逆に、画面を内側にして折りたたむデザインで、たたんだ時の操作用として、もう1枚別のカバーディスプレイを搭載している。発売は4月26日、価格は1980ドル(約22万円)からと、かなり高額だ。
そして2月末にスペイン・バルセロナで開催された世界最大規模の携帯電話関連見本市「モバイルワールドコングレス(MWC)」では、中国ファーウェイが折りたたみスマホ「メイトエックス」を発表した。いまやアップルを追い抜き、世界スマホ市場でサムスンに次ぐシェアを持つ同社の折りたたみスマホは、ロイヤルのフレックスパイと同じく、ディスプレイを外側にして折りたたむスタイルだが、はるかに洗練されている。折りたたむというデザインを活かし、フロントカメラとリアカメラが同じカメラシステムを共有するという仕組みもユニークだ。発売時期は6~7月、価格は2300ユーロ(約28万9000円)と、サムスンのフォールドよりもさらに高い。
実際に完成品を公開しているのは現時点では上記の3社のみだが、折りたたみスマホの開発、製品化を明言している企業は他にもある。中国シャオミは1月に、同社のリン・ビン社長兼共同創業者が、三面鏡のように中心に向かって折りたたむ形式のスマホを操作している動画をソーシャルメディア微博(ウェイボー)に投稿した。ビン社長は「現時点ではプロトタイプだが、消費者の反応がよければ量産を検討する」とコメントしている。
また先述の見本市MWCでは、中国テレビメーカーのTCLも、折りたたみスマホの実物大模型を展示していた。他社とは異なり、縦に細長い画面をアルファベットの「U」字状にたたんだり、手首に巻いたりできるというコンセプトのものだった。同社は2020年中頃の製品化を目標にしているという。
このほかにも、中国レノボ傘下のモトローラが、かつて薄型携帯電話として人気を博したガラケー「レーザー」と同じデザインで、折りたたみスマホを今年夏に発売するとの噂があるほか、韓国LGも折りたたみスマホを開発中と言われている。
では、今年の売れ筋は折りたたみスマホになるのかというと、実はそうとも言い切れない。理由はいくつかある。
そうとも言い切れない「3つの理由」、そして…
最大の理由は値段だ。先述したように、ギャラクシー・フォールドは約22万円、メイトエックスにいたっては約29万円と、あまりにも高い。この価格では、購入者はごく一部に限定されるだろう。
2つめの理由はソフトウェアの問題だ。今まで紹介したスマホはいずれもアンドロイドOSを搭載しており、グーグルは折りたたみスマホに対応するOSの開発を表明しているとは言え、対応アプリが存在しなければ意味がない。たたんだ状態から広げた時の表示の切り換えがうまくできないと、広げて大画面にするという特徴が活かせない。
3つめの理由はこれら折りたたみスマホが搭載する有機ELディスプレーの供給量だ。柔軟で折り曲げ可能な有機ELをスマホ向けに供給できる企業はそれほど多くはない。
そしてもうひとつ。アップルの不在だ。同社も折りたためるiPhoneに関する特許を複数取得しており、開発中との噂もあるものの、いまのところ今年発売のiPhoneに折りたたみ可能なモデルが含まれているとの噂は聞こえてこない。折りたたみスマホが目新しく魅力的でも、ここまで高額だと、iPhoneユーザーが簡単にアンドロイドに簡単に切り替えるとは考えにくい。
とはいえ、「折りたためる」というデザインが、スマホにおいてひとつの流れとなるのは間違いなさそうだ。(岡真由美/5時から作家塾(R))
《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。
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