全固体電池の実用化、目前に TDKと日立造船、今年から本格量産 「安全で大容量化」容易に

 
TDKが近く本格量産を始める全固体電池「セラチャージ」。電解質にセラミック材料を用いている

 次世代電池の本命と目されている全固体電池の実用化が間近に迫っている。液漏れの恐れがなく安全性に優れているほか、大容量化しやすいのが特長で、近くTDKなどが容量が少ない小型の製品を量産開始する計画。2020年代前半には自動車への大容量品の搭載も始まる見通しで、リチウムイオン2次電池からの置き換わりが期待される。完全普及にはまだ時間がかかりそうだが、今年は幕開けの年として記憶されることになりそうだ。

 絶縁体不要で低コスト化

 既存のリチウムイオン電池は、液体の電解質で満たされた正極~負極間の「水槽」を、リチウムイオンが行き来することで充放電を行う。

 これに対し、全固体電池は電解質が固体なのが特徴。安全性の高さや大容量化のしやすさに加えて、正極と負極を隔ててショートを防ぐセパレーター(絶縁材)が不要で低コスト化もしやすい。さらに作動する温度の範囲が広く、短時間の充電も可能。設計の自由度も高い。

 一部で少量の生産は行われているが、本格量産という意味ではこれから。その最も近い位置にあるのが、電解質にセラミック材料を用いた小型電池だ。主に電子部品メーカーが、積層セラミックコンデンサーなどの技術を生かして開発を進めている。

 TDKは、電子基板に実装するチップ型の「セラチャージ」を開発。同社によると、「ボタン電池と置き換えれば、搭載機器を小型化でき、充電も可能」という。既に月3万個のサンプル生産は行っているが、今年中ごろには本格量産に乗り出す考えだ。

 セラミック系は、富士通系電子部品メーカーのFDKも昨年12月にサンプル出荷を始めており、村田製作所は19年度中の製品化を視野に入れる。容量など多少の違いはあるものの、各社とも小型のIoT(モノのインターネット)機器やウエアラブル機器などでの使用を主に想定している。

 自動車への供給見据え

 一方、電解質に硫化物系の無機材料を使った電池も実用化が迫っている。その先頭を走るのが日立造船だ。

 同社は厚さ0.3ミリのシート電池を開発。19年度中の商品化を目指し、サンプル出荷を始めている。計画通りなら、硫黄化合物系の実用化は初めてとなる。

 子会社で手掛けるプレス機の技術を活用し、粉末の電解質を押し固める技術を確立。液体を何度も乾燥して固体にする既存手法に比べ工程を省け、低コスト化できるという。「まず宇宙空間で使われる電子機器など、特殊用途向けに売りたい」と同社。将来的には大きな需要が見込まれる自動車への供給も見据える。

 全固体電池は、トヨタ自動車が17年10月の東京モーターショーで、20年代前半の商品化を目指すと発表したのをきっかけに広く認知されるようになった。同社は30年までに車載電池の開発・生産で1兆5000億円を投じる方針で、現在は東京工業大学などと開発中だ。昨年12月にはパナソニックと開発や生産で提携を検討すると発表したが、対象には全固体電池も含まれる。

 全固体電池の普及には、最適な材料の探索を含め技術的課題がまだまだあるほか、リチウムイオン電池と同様、電極材料となる希少金属(レアメタル)の確保も課題。米国のベンチャーから電池分野で台頭著しい中国勢まで世界規模で開発競争が過熱する中、素材などで最先端技術を持つとはいえ、日本が主導権を維持できるかも予断を許さない状況だ。それでも富士経済によると、17年に21億円だった全固体電池の市場は、35年に2兆7877億円まで拡大する見通し。この超有望市場で生き残れるかは、今後数年間の取り組みが鍵を握りそうだ。(井田通人)