【オリパラ奮闘記】「いだてん」さんとの思い出

 
金栗四三さんが残した「体力気力努力」の文字が刻まれた石碑=熊本県和水町

 今年のNHK大河ドラマは「いだてん~東京オリムピック噺~」。物語前半の主人公は日本最初の五輪選手として、1912年に開かれたストックホルム大会のマラソンに出場した金栗四三(かなくり・しそう)さんです。

 実は私は金栗さんご本人にお会いしています。小学校6年生の頃だったと思うのですが、父(君原健二=68年メキシコ五輪男子マラソン銀メダリスト)に連れられて熊本の病院にお見舞いに行きました。病室のベッドには御爺様がおられました。父からは「日本マラソン界の父」という説明を受けたとかすかに記憶していますが、子供だった私は、目の前にいる方がどれほど偉大な方であるか理解できませんでした。

 金栗さんは私の顔を見て強く手を握り、涙を流しながら「ありがとう」と言ってくれました。あれから35年あまり、そのことははっきりと覚えています。

 ドラマの「いだてん」は戦争で幻となった1940年東京五輪から、私の父親がマラソン代表として出場した64年東京五輪へと続きます。子供の頃に父親とともに対面した、あの“御爺様”が主役のドラマを、2020年東京五輪・パラリンピック関連の仕事をしている私自身が毎週、欠かさず見ている。このめぐり合わせは感慨深く、感謝しかありません。

 東京に来年、もう一度やってくるオリンピック。今度は私から、金栗さんに心から「ありがとう」と言いたいです。

 (君原嘉朗=アシックス2020東京オリンピック・パラリンピック室室長)

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 きみはら・よしろう 昭和46年6月10日生まれ、福岡県出身。平成6年にアシックスに入社し、27年から現職。先日、金栗さんの出身地、熊本県和水(なごみ)町にある金栗四三ミュージアムや生家を見てきました。豊かな自然の中にあり、“金栗少年”が育った時代に思いをはせました。