音声翻訳、AIで精度向上 観光・行政・医療…広がる活躍の場
外国人との会話を支援するため音声翻訳技術を活用した製品が続々と登場している。人工知能(AI)の進化により翻訳精度は向上し、観光や行政、医療などの現場で強い味方になりそうだ。
31言語対応
「クレジットカードが使えなくても電子マネーを使える店は増えてきています」-。情報通信研究機構(NICT)が開発した多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」は、例えばこんな文章を正確に翻訳する。
スマートフォンやタブレットに無料のアプリを入れ、画面に向かって話しかけると、英語や中国語、スペイン語など31言語に訳すことができる。
NICTは1986年に音声翻訳研究を開始。AIの進化と機器の性能向上が寄与し、社会で活用できる段階になった。タクシー利用や買い物などで意味が通じる翻訳になる割合は、日本語と英語の間では9割前後に達し、広報担当者は「便利な道具として広く使ってほしい」と話す。
民間企業はNICTの技術活用を進める。パナソニックはホテルや観光案内所向けのタブレット型翻訳機を発売。凸版印刷は「職種が変わった場合は在留資格も変わります」など自治体窓口でよく使う定型文や固有名詞を登録した翻訳アプリを発売し、外国人の住民が多い神奈川県綾瀬市などが試用している。
緊急時課題
コニカミノルタは翻訳機能と電子問診票システムを組み合わせたタブレットを発売し、観光客が多い北海道富良野市や米海軍基地がある長崎県佐世保市の病院が導入した。ソースネクストが発売した手のひらサイズの通訳機「ポケトーク」にも活用。観光地や公共施設、個人の利用が進んでいる。
通訳や翻訳業務を手掛けるブリックス(東京)の吉川健一社長は「買い物や観光はAIを使った翻訳で対応可能だが、旅行中の事故など緊急時は人の通訳の方が適切な対応ができる」と話す。
2018年の訪日外国人客数は3119万人で、政府は20年に4000万人、30年には6000万人に増やす目標を掲げている。
観光庁は昨年の台風21号や北海道の地震で外国人旅行者への情報提供に課題があったとして、新幹線車内で遅延情報を英語で知らせたり、多言語で対応できる空港会社職員を雇用したりするよう事業者に呼び掛け、翻訳アプリ活用も含め対策を強化する。
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