AI・人工知能EXPO開幕 感情データ化、集う新技術
国内最大級の人工知能(AI)技術の展示会「AI・人工知能EXPO」が3日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕した。AIを使って脳波を分析し、感情を読み取るなどの最新技術のほか、医療や製造、小売りなど幅広い業種で広がる新サービスも目立ち、AIの実用化が現実味を帯び始めた。
展示会には250の企業と団体が出展し、ベトナムなど海外からも18団体が参加した。5日までの3日間で約5万人の来場を見込む。
AI技術は、データの収集と利用によって、機械学習し、精度を高める好循環を生み出せるかが成功の鍵を握る。各社とも創意工夫を凝らした循環モデルをアピールした。
京都大学の文書解析技術を応用したインサイトテック(東京都新宿区)は、消費者に不満に思ったことを書き込んでもらい、ギフト券に交換できるポイントを付与するサービスを手がける。AIが提携先の企業に役立つ書き込みを抽出する。2015年に開始した同サービスには約1500万件の「不満」が寄せられ、日産自動車など約100社が商品開発などに利用している。年間約300万件が新たに書き込まれており、そのデータをもとにAIが学習するという。
15年に創業した東京大学発のAIベンチャー「ストックマーク」(東京都港区)は国内外約3万メディアのニュースを分析し、関連する企業にニュースを配信している。前後の文脈を理解する自然言語処理技術で、関連性のあるニュースだけを選別でき、内容もAIが自動で要約してくれる。精度を高めた言語処理技術を応用し、2月から営業メモなど社内情報を管理する新サービスを始めたという。
電子部品メーカーのテクニカ(東京都瑞穂町)は脳波をAIが分析し、感情を読み取る装置を展示。脳が感じた印象を直接把握できれば、より効果的な広告宣伝につながるという。
他方、こうした新サービスの普及には課題も山積している。AIに不可欠な統計学とコンピューターの知識を兼ね備えた専門人材「データサイエンティスト」が日本で不足するなど、海外に比べ実用化には高い壁が立ちはだかる。
人材育成を手がけるデータミックス(東京都千代田区)の担当者は「20代から40代まで受講者の年齢層は幅広い」という。AIの導入支援コンサルティング会社の担当からは「(高齢の)経営者層にAIへの理解が浸透していない企業も多く、AIで何ができるかとどう活用するかでミスマッチも生じている」との声も聞かれた。(高木克聡)
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