昨年11月に発売されたレクサスの都会派コンパクトクロスオーバー「UX」。国内では「LX」「RX」「NX」に続く4番目のSUVとしてラインアップされているが、どうやら兄貴分の上位3モデルとは異なる味付けで、単なるスケールダウンにとどまらない独自のポジションを確立しているようだ。今回はハイブリッド車の「250h」に試乗した。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)
不思議な空間
レクサスが人気のコンパクトSUV市場にUXを投入した。開発を手掛けたのはトヨタ自動車初の生え抜き女性役員で、レクサス初の女性チーフエンジニアでもある加古慈(かこ・ちか)氏。UXは「アーバン・クロスオーバー」の略の通りシティユースを意識しており、クーペやハッチバックの車高を持ち上げた“SUV風”という位置づけだ。
基本骨格には小型車向けの「GA-Cプラットフォーム」を採用している。サイズ的には同じ車台を共有するスポーツハッチバック「カローラスポーツ」やコンパクトSUV「C-HR」と近似するが、車高はカローラスポーツ(135ミリ)とC-HR(140ミリ)よりも高い160ミリに設定。ならば上背もあるのかと思いきや、全高はC-HRより10ミリほど低い1540ミリに抑えている。低く構えた流麗なライン、大きく張り出したフェンダーに空力性能を追求したボディ形状も相まって、外観はスポーティーな印象だ。
実際に乗り込むと、意外にも優れた乗降性で車高の高さを感じさせず、そのまま腰を下ろすとヒップポイントの低さに驚かされる。着座姿勢はハッチバックやセダンに近く、ひざをカクっと折り曲げてシートから見下ろすようなSUV的要素は薄い。メーターフードやダッシュボードの高さを抑えることで良好な視界も確保しており、ボンネットの形状とタイヤ位置が把握しやすいため車両感覚もつかみやすい。
車高がそこそこ高いのに、全高は低い-。そこはクロスオーバーとしては珍しくないのだが、UXはハッチバック風の平べったいフォルムからは想像できないほどキャビンが広く、開放感に溢れている。もちろん兄貴分のRXやNXの規模ではないが、身長172センチの筆者がリヤシートに座ってもヘッドクリアランスに余裕があり圧迫感は皆無という、なんとも不思議な空間だ。恐らく新プラットフォームの採用によってシートをより低く設置できるようになるなど、キャビンデザインの自由度が広がり、シートの造形や見晴らしの良さなど細部のデザイン面を工夫することで、ここまで高い快適性を実現したのだろうと想像する。試乗後の話になるが、思わずレクサス関係者に「プラットフォームはC-HRと同じですよね?」と再確認してしまったほどだ。
内装に日本らしさ
インテリアはシンプルで清潔感があり好印象。日本メーカーらしく和の要素も取り込んでおり、ダッシュボード上面には和紙の風合いを再現したオーナメントが広がる。センタークラスターやパワーウインドー操作スイッチ周辺のパネルは、金属の塊を削り出したような素材感を表現。表面を走る無数の細いラインが、日本人の艶やかな黒髪のようだ。
スマートフォンは、センターコンソールのトレイ上に置くだけで簡単にワイヤレス充電ができる。10.3インチのワイドディスプレイは非常に見やすく便利なのだが、ナビやオーディオ類を指先で操作できるリモートタッチは意図する文字の一つ隣を選択してしまうなど、相変わらずぎこちなさが目立つ。グローブボックスを開閉した時の安っぽい感触も気になってしまった。
バックドアはハンズフリーに対応。両手が荷物でふさがっていても、リヤバンパーの下に足を出し入れするだけで開閉することができる。ラゲージスペースは浅く、リヤピラーが斜めに寝ていることもありバックドア付近は狭く感じるが、ここはハッチバックスタイルとしての割り切りが必要だ。
レクサスのインテリアを見ていると、エンブレム以外でそのブランドを象徴する共通デザインを内装にも取り込めばいいのにと思う。どこかにレクサスであることを証明する、統一感のあるアイテムをあしらえば、「そのアイテムのある空間に身を置きたい」といった所有欲も湧いてくるのではないか。ジャーマン3やボルボ、マセラティなどは、どの車種にも“らしさ”を感じさせる共通デザインを内装のどこかに忍ばせてあり、そのブランドの世界観を表現したり雰囲気を漂わせているのだ。レクサスがブランドイメージの一環として日本の伝統や匠の技をアピールしたい気持ちも分かるが、では実際にユーザーが何に興味を示し魅力を感じるかとなれば、そういうことではないような気がするのだ。個人的には全ての車種を高級クーペ「LC」の雰囲気で染めてしまえばいいのになんて考えている。
穏やかで上品な走り
エクステリアはレクサスを象徴するスピンドルグリルと、「L」型のデイライトが目を引く。ボディの表面を彫刻刀で削り出したような無数のプレスラインが強い陰影を生み出す。現行のレクサス車でUXだけに与えられた外観的特徴が、左右のL字リヤランプを真一文字につないだ翼形状のLEDコンビランプだ。ランプの両端を立体的なフィン形状にすることで整流効果を高めており、走行安定性の向上にも寄与しているという。
その効果のおかげかは分からないが、走りはなかなか上品な印象を受けた。試乗車は2リッター直4エンジン(107kW〈146PS〉/188Nm〈19.2kgfm〉)とモーター(80kW〈109PS〉/202Nm〈20.6kgfm〉)を組み合わせたFF(前輪駆動)のHVで、アクセル操作に対するレスポンスは穏やかで滑らか。エンジン音の静粛性が高く風切り音も(本当に)皆無のため、むしろロードノイズが目立ってしまったほどだ。ノイズについては、パンクしてもしばらくは走行可能なランフラットタイヤ(225/50RF18)を履いていることが影響していることもあるだろう。
CVT(無段変速機)ということもあってかアクセルを踏み込んだ時のレスポンスや瞬発力には物足りなさもあるが、UXのキャラクターや用途を考えれば圧倒的な動力も絞り上げた足回りも不要。走行モードを「スポーツ+」にした時の反力の高まったハンドリングには“落ち着きのなさ”も感じたが、これも普段使いなら「ノーマル」もしくは「エコモード」で十分だ。感動するような乗り心地というわけではないし、FF+ランフラットタイヤの組み合わせは操舵時にフロント部の重さも感じたが、はっきり言って日常のドライブには特段影響がないし、毎日のドライブが快適で気持ちの良い時間が過ごせれば十分なのだ。
兄貴分のLX、RX、NXは走りも体躯もダイナミックだが、街中を駆け抜けるうえでUXの取り回しの良いコンパクトさと、穏やかでスムーズな走り味は非常に魅力的だ。しかもキャビンは広くて快適。シートが合っていたのかヘルニアを抱える腰が痛むこともなかった。いざという時のためにロードクリアランスも確保している。
日常の相棒として、開放的で見晴らしのいいドライバーズシートに収まり都会を優雅に走る-。恐らく多くの人のライフスタイルに合致するクルマであり、レクサスからコンパクトSUVの登場を待っていた人にとっては待望の一台だろう。ガソリンモデルなら390万円スタートという価格も手が届きやすい。3月29日時点で「納期6カ月」という事実がニーズの高さを物語っている。
《ヒトコト言わせて!》
レクサス広報部「UXのコンセプトは『Creative Urban Explorer』(CUE)です。このクルマが生活の変化を期待する人の背中を押し、豊かなライフスタイルを送る『きっかけ』になってほしいという思いを込めています。開発では、年齢や性別といった枠を意識せず、まずはお客様にとって毎日のパートナーとなり得る適切なパッケージを追求したので、皆様の移動の時間を上質に彩る一台としてお乗りいただけたらと考えております」
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【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。▼アーカイブはこちらから
■主なスペック(UX250h バージョンL)
全長×全幅×全高:4495×1840×1540ミリ
ホイールベース:2640ミリ
車両重量:1580キロ
エンジン:直列4気筒
総排気量:2.0リットル
最高出力:107kW(146ps)/6000rpm
最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4400rpm
モーター:80kW〈109PS〉/202Nm〈20.6kgm〉
トランスミッション:CVT
駆動方式:FF
タイヤサイズ:225/50RF18
定員:5名
燃料タンク容量:43リットル
燃料消費率(JC08モード):27.0キロ/リットル
ステアリング:右
車両本体価格:509万円