保険審査に遺伝情報使わず 差別懸念に対応、生保協会が指針策定へ
国内の生保各社が加盟する生命保険協会が、保険の加入や支払いなどの審査の際に遺伝子検査結果の収集や利用はしないとの見解を明記した指針を策定することが8日までに分かった。がんの治療や予防目的で検査が増える中、結果によって加入や支払いの判断に差をつける「遺伝差別」が起きるのを懸念する声があり、遺伝性の病気の患者団体が対応を求めていた。
遺伝子検査は、個人の遺伝子を調べて病気の治療や予防に役立てる「ゲノム医療」の中核となる技術。厚生労働省が、がん治療の体制を整備していることなどから、関心が高まっている。
以前から保険各社は審査の際に遺伝子検査結果や家族の病歴などの遺伝情報を使っていないとしてきた。だが一般の人の受け止め方は異なり、2017年の厚労省研究班の調査では、1万1000人のうち300人以上が遺伝情報を理由に生命・医療・学資保険の加入を拒否されるなどしたと答えた。
さらに同じ年に数社の契約書類に遺伝情報の使用を疑われかねない記載があることが発覚。明確な社内規定がない社もあった。
そこで協会は業界共通の指針を作り「遺伝子検査結果の収集や利用はしておらず、今後も継続することが各社の共通認識」と明示する方針を決めた。
契約者が自発的に結果を伝えた場合も利用しないほか、医療現場以外の場所で使われる、体質や病気のなりやすさなどを調べる民間の遺伝子検査ビジネスの結果も使用しない。
ただ検査前に必要な医師による遺伝カウンセリングは、保険加入申し込みの3カ月以内に受けた場合、診療歴に当たるとして告知を求める。
公表時期はまだ確定していないが、協会は「業界からの視点だけでなく広く世の中の意見を取り入れていきたい」としている。
関連記事