【スポーツi.】メジャーリーグ、成功の秘訣はパーク構想
今年も米アリゾナ州スコッツデール市の協力の下、同市のスコッツデールスタジアムをホームスタジアムとして使用する米大リーグ機構(MLB)、サンフランシスコ・ジャイアンツのスプリングトレーニングキャンプ(通称・カクタス・リーグ)に参加させていただいた。(帝京大学教授・川上祐司)
2月末から約1週間にわたってこの地で開講する小職担当授業「アメリカスポーツマネジメント研修(2単位)」含めて学生ともども貴重な機会をいただき、行政およびチーム関係各位にはこの場をお借りして御礼申し上げたい。
観戦以外の楽しみ方
今年で4回目の参加となるカクタス・リーグだったが、まさにボールパークというべきこのベースボール環境を自由に楽しむ多くのファンたちで埋め尽くされていた。特に天然芝で覆われる外野席はまさにその真骨頂であろう。そのほとんどが試合など見ていない。ビール片手に談笑しながら盛り上がるグループや犬と戯れる老夫婦、子供を寝かしつける家族などこの空間の楽しみ方は人それぞれである。
ボールパークのゆえんである。その一方で、スタジアム内の物価も年々上昇の一途をたどる。ドラフトビール1杯の値段は何と14ドル(約1500円)だが飛ぶように売れている。週末1日の飲食物だけの総売り上げは約16万1000ドル超というが単に気候だけの問題ではない。
ジャイアンツはスコッツデール市との契約によりこのスタジアムでのホームゲームを14試合以上開催しなければならないが今年は16試合も開催している。多くのマイナー契約選手もベンチ入りするこのカクタス・リーグだが毎日でも開催してほしいと願うのはファンだけではないのである。
今年はメジャーリーグの2チームが日本での公式戦で開幕を迎えた。結果的にイチロー選手の引退試合となってしまったが、そのラストシーンはこのカクタス・リーグの関係者からも感動を呼んでいた。一方で、カクタス・リーグでのマリナーズのホームゲームは13試合、アスレチックスは12試合で終わり、ホームスタジアム内のショップも既に3月中旬には閉店していた。チーム自体は日本国内での多額の興行売り上げが見込めるもののカクタス・リーグにとってはあまり喜べないのが現状である。
ファンビジネス
アリゾナ州立大学W.P.Careyビジネススクールのリポートによると、昨年のカクタス・リーグにおける経済効果は6億4400万ドルと試算しており2015年調査比111%の伸びを示す。州の税収入は2420万ドルと自治体が770万ドルをそれぞれ計上する。また、期間中は約6500人の雇用を生み出し約2億2500万ドルを給金として支払っている。
しかしそれだけにとどまらない。また各ベースボールファシリティーも行政やチームが集めるシニアボランティアを中心に運営されており、その数合計で約2000人という。ジャイアンツのホームゲーム前のミーティングでは「Have a fun」とマネジャーが連呼する。そしていつも笑顔でファンを出迎えるシニアボランティアスタッフたち。
そもそもプロスポーツビジネスとはファンビジネスである。このたった1カ月の巨額な経済効果はこのシニアスタッフ自身の「fun」が源である。スタッフが楽しくなければお客さまも楽しくない。スポーツビジネスで最も重要なことがこの現場にあふれている。スポーツビジネスはFun Economicであるのだ。アリゾナのカクタス・リーグの詳細は拙書「アメリカのスポーツ現場に学ぶマーケティング戦略(昇洋書房)」を参照にしてほしい。
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【プロフィル】川上祐司
かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭をとっている。著書に『メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略-マーケティング、スポンサーシップ、ツーリズムへの展開』(晃洋書房)がある。54歳。大阪府出身。
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