【健康経営 がんと向き合う】再発するがん・しないがん

 
GMS 竹内規夫社長

 弊社は毎日、何十件も電話でがんの無料相談を受けている。その中には私のがんは転移しないがんだから、という患者もいる。しかし基本的に転移しないがんはない。転移するからがんであり、転移しない腫瘍であれば良性のポリープなどということになる。がんである限り転移する。がんは大きくなれば転移の可能性は高まるが、小さいがんでも転移する可能性はある。(竹内規夫)

 また、再発というのはがんが治ったのにまたがんができると思っている人が多い。しかし、実際には再発するがんは実は治っていなかったということです。再発は、基本的には手術などで取り残したがんが大きくなる場合と、肝臓や肺などに遠隔転移していたが、それらが小さくて見つけられず、後に大きくなって見つかるという場合が多い。

 つまり、がんは治っていないということになる。画像などではがんが見えなくなるため、治ったかのように錯覚するのだ。もちろんがんのステージを決める際には、遠隔転移の有無を陽電子放出断層撮影とコンピューター断層撮影を組み合わせた「PET-CT」などであらかじめ調べる。ただ、PET-CTでもがんが直径1センチ以下の場合はなかなか発見ができない。がん細胞1つの大きさは10ミクロンと小さいため、1センチ以下のがんは画像診断ではなかなか発見できない。

 このため、検査で転移がないといわれても実際には転移していたということが多々ある。主治医もそれが分かっているので、見えているがんを手術で全て取り、手術が成功しても、その場で完治したとは決していわない。それは肝臓や肺などに遠隔転移があるかもしれないと思っているからだ。

 おのずと、遠隔転移や取り残しの可能性が高いと、あるかないか分からないがんに対して抗がん剤を使うことになる。本当に手術でがんが全て取り切れたのであれば、ホルモン治療や抗がん剤治療をする必要はないからだ。再発するがんというのは局所再発を除き、手術の時にステージ1とかステージ2という診断をしたものの、実はその時点でステージ4だったが遠隔転移が見つけられなかったというだけの話なのだ。

 余談だが、胃がんになって胃を手術で取った後に肝臓に再発が見つかったとする。その状態だと胃はないので、がんは肝臓だけにある。これを肝臓がんだという患者が多いのだが、この場合は胃がんということになる。胃がんの肝臓転移だ。治療も、胃がんのガイドラインにのっとり、胃がんの抗がん剤を使うことになる。

【プロフィル】竹内規夫

 たけうち・のりお 1978年、和歌山県生まれ。がん治療コンサルタント。2008年ごろから、がん患者をサポートする活動を開始。16年、がん治療専門のコンサルタントが、患者をサポートするGMSを設立し、社長に就任。