【クルマ三昧】見やすい「バックモニター」は? メーカー間で表示方法の主導権争い勃発

 

 2002年式の乗用車を所有している。購入してからもう16年も経過する。丁寧にメインテナンスを繰り返してきたこともあり、トラブルの兆候はない。ガレージの肥やしにさせているのが不憫だけれど、たまの快晴の日に“散歩”に連れ出してやると、高速道路だってワインディングだって快調だ。

バックモニターが運転をサポート

 だが、あらためて「もう旧車なのかもなぁ」を実感する瞬間がある。レストランのパーキングスペースに停めようとするときに、ドギマギしてしまうのだ。

 不遜な言い方かもしれないけれど、運転にはただならぬ自信を持っている。それはなにも速く走るだけではなく、車庫入れも同様で、モタモタすることはまずない。だというのに、旧車は僕を、まるで免許証を取得したばかりの初心者にさせる。免許歴40年だというのに、若葉マークが必要なほどにだ。

 その理由は単純明快で、バックモニターがないからである。職業柄、いつも最新モデルに乗る日々が続く。だからこそ旧車に乗るとバックモニターがどれほど運転をサポートしてくれているものかを強く実感するのだ。

メルセデス・ベンツのバックモニター

 バックモニターの進化は日進月歩だ。画面の解像度は日々向上している。サイズも日増しに拡大する一方だ。もはや12.8インチも珍しくはない。9.7インチのiPadをもはや超えているのだから恐れいる。

BMWのスクリーン

 画面に中にガイドモニターラインが表示されるのも便利この上ない。視点を切り替えたり、交差する路地を映し出したり、死角を減らすために様々なアイデアが投入されている。あまりに機能が多すぎて、逆に戸惑うこともあるというほどに多機能化が進んでいる。

 おそらくいまだに教習所では、バックの時には窓を開け、顔を出して、前後左右をしなさいねと教育されるに違いない。まあ、たしかになおかつ安全なのかもしれないけれど、現実的にはバックモニターを最大限活用することが有効である。

アウディのカメラ

 硬い体をどれほど捻じ曲げて後方確認しても、ドライバーの目線からは左右のピラーやトランクがあるから死角が残る。リアバンパー付近のカメラが届ける映像との比較では、圧倒的な差があるのだ。

メーカー間で主導権争い

 そんな便利なバックモニターなのだが、メーカーによって表示方法の主導権争いが起きている。様々なカメラが捕捉した映像を上空からの擬似映像に合成して表示する方法と、上からではなくドライバー目線の映像を素直に再現するタイプに大別できる。前者は日産やテスラが積極的に進めている。「バードアイ」がそれ。

 個人的な感想でいえば、バードアイはどこか使い辛さが残る。特に、脳の硬化が始まった僕には、自らのポジションを鳥の視点に変換するロスが生じるからだ。

レクサスのデジタル式サイドミラー

 人間の運転は、認知、判断、操作を繰り返している。その制度が高ければ高いほど安全である。認知はもちろん目や音。判断は経験や考え方。操作は運転テクニックである。この認知を圧倒的に高める機能の一つが、クルマのそこかしこに埋め込まれているモニターである。そう、モニターの数が多ければ多いほど認知性は高まる。

 ただ、判断するのは人間だ。高い精度で認知し、正しく判断し、適切に操作してはじめて安全が保たれる。ぜひ判断しやすい表示にしてもらいたいものだ。

ボルボのモニター

 【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちらから。

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【プロフィール】木下隆之(きのした・たかゆき)

レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター

東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。