フリマに英会話、旅行…アクティブシニア向けビジネス活況

 
メルカリの60歳以上限定懇談会で、フリマアプリでの体験を語り合う参加者=3月19日、大阪市北区

 超高齢社会を迎え、年を重ねても新しいことに積極的な「アクティブシニア」を対象にしたビジネスが活況だ。個人間の商品売買を仲介するフリーマーケット(フリマ)アプリに出品したり、英会話に挑戦したりする高齢者が増加。IT化や訪日外国人客の急増といった社会の変化に対応しつつ、市場を拡大している。

 「売れたときは体を電気が走ったような衝撃だった。売るってこんなに楽しいんだと思った」

 3月中旬、フリマアプリ大手のメルカリが大阪市内で開いた60歳以上限定のアプリ利用者懇談会で、京都府の60代の女性はアプリで初めて物を売った経験をそう語った。

 教師を退職後、生活に物足りなさを感じていた頃にメルカリの存在を知り、約3年前から衣服やバッグなどを出品。「どんな人が使ってくれるのか、わくわくしながら(商品の)発送先のあて名を書く。全国とつながっている気持ちになる」

 同社によると、フリマアプリは20~30代を中心に市場を拡大してきたが、近年は60歳以上の利用が急増。「生前整理」などのコメント付きで出品される商品が平成30年は前年の約2・5倍となった。

 同社が今年2月に全国の1648人を対象に実施したインターネット調査によると、アプリ利用後の意識変化として「社会とのつながりを感じるようになった」が60代以上で26・8%に上り、20代(9・9%)の約3倍だった。

 一方、ECC(大阪市)は昨年4月、高齢者などのシニア向け英会話コース「ECCプラチナクラブ」を開設した。英文の音読を繰り返すなどの訓練よりも、教師や受講生同士の交流を重視。日本語を交えた分かりやすいテキストで実用的な会話を学ぶ。

 同社は昭和37年の創業時からシニア向けコースを設けているが、受講者数は平成29年4月からの1年間で76・3%増えた。プラチナクラブに通う動機は「洋画のせりふや洋楽の歌詞を英語で理解したい」「老いた母を海外旅行に連れていきたい」などさまざまだ。

 来年の東京五輪・パラリンピックなどの国際イベントも背中を押している。同社は「現在のシニア層はボランティアなどの社会貢献に対する意識がとても高い」と指摘。訪日外国人と接する機会の拡大が、英会話への関心を高めている。

 アクティブシニア向けビジネスにはほかにも、歴史や自然などのテーマや写真撮影などの趣味に特化した旅行プラン、高齢者への割引などの優待制度を設けたスポーツ用品店やフィットネスクラブ、男女の出会いの場を提供する結婚相手紹介などがある。

 三菱総合研究所プラチナ社会センターの松田智生主席研究員は、「高齢者には病気などの『体の不安』、年金だけでは生活が苦しい『お金の不安』、退職後に社会とのかかわりが希薄になるなどの『心の不安』がある。逆転の発想で不安を安心に変え、高齢者が輝く社会をつくり出すビジネスが求められる」と話す。(牛島要平)