台風も克服 風力発電に新風 課題を逆手に 特許「垂直軸型マグナス」普及加速

 
「垂直軸型マグナス」と呼ばれる新しい風力発電機とチャレナジーの清水敦史社長=3月、沖縄県石垣市

 東京電力福島第1原発事故後、存在感が増している再生可能エネルギー。なかでも風力発電は陸上や洋上にも設置可能で、太陽光発電と違い夜間も稼働できるなど、将来は「メイン電源」の役割も期待される。一方で、強風による故障や保守点検の難しさといった課題も表面化。だが「ピンチはチャンス」と逆転の発想で、台風でも利用できる風車の開発のほかドローンを使った点検など「新風」を巻き起こす動きも出始めた。

負荷大きく事故多発

 沖縄県石垣市にある八重山諸島の一つ石垣島。3月上旬、海から暖かな潮風が流れ込むと、亜熱帯特有の常緑樹が揺れ、珍しい形の「羽根」もゆっくり動きだした。「これは風力発電機で、台風でも能力を発揮できます」。開発・製造を担うチャレナジー(東京)の清水敦史社長(39)の説明に熱がこもった。

 2018年8月、石垣島で「垂直軸型マグナス」と呼ばれる風力発電機(出力10キロワット)の実証試験が始まった。見た目は、携帯電話の基地局のアンテナに似ている。垂直に立った3本の「筒」があらゆる方向からの風を受けて軸を回転させる力を生み出し、発電する仕組み。駆動音も静かだ。

 通常の風力発電機はプロペラが時速100~200キロで回り、本体への負荷も大きく倒壊などの事故が起きている。清水さんが考案した垂直軸型マグナスは、風車の回転を制御することが可能で、台風時でも運転できる。野鳥が高速のプロペラに衝突する「バードストライク」も起きにくい。

 日本の風力発電機の多くは海外メーカー製で、台風が頻発し、不安定な気流が多発する島国の日本には合わないという。清水さんはこうした問題点を商機と捉え、特許を取得、チャレナジーを立ち上げた。

島国から問い合わせ

 「配電盤にヤモリが入って故障したこともある」と開発に苦労は絶えない。期待するデータが得られない日も続くが、20年の製品化を目指している。昨年12月には、ポーランドでの国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)に出展し、フィリピンやオーストラリアなど島国からの問い合わせも相次ぐ。「エネルギー業界の流れを変えたい」。清水さんの挑戦は続く。

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 ドローンが保守点検に風穴

 保守点検の業界に風穴をあける-。

 北海道伊達市で昨年11月、ドローンを使った大型風車の点検が行われた。約10メートルの距離でホバリングしながら数百枚の画像を撮影。データはすぐに地上のパソコンに表示され、作業は1時間半ほどで終わった。ドローンでインフラの保守点検をするエアロダインジャパン(東京)。点検後、伊藤英代表取締役(36)は手応えを感じた。

 人件費も時間も節約

 風力発電機の点検は、高所作業で危険が伴う上、1基当たり約4~5時間かかり、その間は発電できない。だがドローンを使えば地上からの遠隔操作で点検でき、人件費と時間が大幅に抑えられる。さらに作業が難しい洋上でも保守点検が行いやすくなるという。

 東北ドローン(仙台市)も昨年5月に風力発電機の点検事業に参入。既に千葉や新潟、大分などで約30基を点検した。今後は、画像データと人工知能(AI)で故障などを自動解析するサービスや、風車を止めずに撮影できる技術を開発する予定だ。

 桐生俊輔代表(38)は、ドローンを使った保守点検が欧州では当たり前になりつつあると指摘。「日本はメンテナンスに時間を要し、普及が進まない側面がある。新しい技術で風力発電を支援していきたい」と話した。