【スポーツbiz】現役時代の実績、引退後にも大きく影響 CM出演料に差
プロ野球も、海の向こうの大リーグも連日、大きな話題をなげかけてくる。右肘の故障、トミー・ジョン手術から復帰したロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手に日本時間14日、待望のホームランがうまれた。ツインズ戦の三回無死三塁、大谷が放った打球は左翼席に飛び込んだ。今季26打席目の初アーチだ。「いい場面で打てましたね。打席でもボールがよく見えていましたから…」。淡々と語る大谷らしさも戻り、ファンもひと安心だろう。(産経新聞客員論説委員・佐野慎輔)
“ブランド”を確立
ところで、その大谷選手のCM1本当たりの出演料はどのくらいだろうか? ふと気になって調べてみたら、2億円台との答えがあった。テニスの錦織圭選手や大坂なおみ選手と肩を並べる日本選手ではトップクラスの出演料である。
なぜ、唐突に大谷選手のCM出演料が気になったかというと、ネットサーフィンをしていたら、現役引退したイチローさんの2019年度のCM出演料が7500万円で、引退した日本のアスリートではトップだとする記事を見つけたからだ。
これは写真週刊誌「FLASH」の編集部が、大手広告代理店が6000社のクライアントに提示した資料から男女タレントと引退選手の3部門に分けて集計したものだという。
イチローさんをトップに、松岡修造さんの6000万円、長嶋茂雄さん5000万円、そして松井秀喜さん、長嶋一茂さんと続く。このうち松岡さん、一茂さんはタレントとしての要素も加わるので、純粋に引退アスリートとなると、イチロー、長嶋茂雄、松井の各氏がトップ3となり、なるほどなあと思わせる結果ではあった。
ちなみに、長嶋さんが前年度と変わらない金額だったのに対し、イチローさんは18年度の5000万円から2500万円も上昇した。数々の記録とともに今年3月限りで現役生活を退いた話題性が大きく加味されたものである。
憧れはいつまでも
大手広告代理店にいた知人によれば、「引退したスポーツ選手は使い勝手がいい」という。「だってテレビの視聴者や購買層には既にイメージができあがっているだろう。そのイメージに応じたクライアント選択ができる。現役選手だと球団や所属事務所などの制約がある上に、成績が落ちたり、けがで戦列を離れたりするリスクまで考えなければならない。引退した選手はそんな心配もいらない」
もちろん大谷選手のように、絶頂期は現役時代だったことはいうまでもない。しかし、引退した後も需要が続くのがアスリートの強みといっていい。自分たちの世代のヒーロー、ヒロインへの憧れは長く続くのである。
その証拠に女性アスリートではフィギュアスケートの浅田真央さんが3000万円でトップ。総合順位は前記5人に続く6位で現役時代の人気をそのまま維持している。以下、福原愛さん(卓球)、宮里藍さん(ゴルフ)、吉田沙保里さん(レスリング)と続く順位も納得できよう。
言い換えれば、現役時代の実績、人気がそのまま引退後も長く続く。その意味ではアスリートはやはり現役時代にめいっぱいプレーすることが大事なのはいうまでもない。
大谷選手だけではない。野球では清宮幸太郎選手や吉田輝星選手、サッカーの堂安律選手や女子ゴルフの畑岡奈紗選手、陸上100メートルで10秒の壁を破ったサニブラウン・ハキーム選手など大きな期待を抱かせる選手たちが少なくない。令和を代表するアスリートとして存在感を発揮してもらいたい。
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【プロフィル】佐野慎輔
さの・しんすけ 1954年生まれ。富山県高岡市出身。早大卒。産経新聞運動部長やシドニー支局長、サンケイスポーツ代表、産経新聞特別記者兼論説委員などを経て2019年4月に退社。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大非常勤講師などを務める。著書に『嘉納治五郎』『金栗四三』『中村裕』『田端政治』『オリンピック略史』など多数。
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