【高論卓説】NYはキャッシュレス社会 紙幣使用はチップのみ、日本も参考に

 

 先日ニューヨーク、ボストンと米取材旅行に出掛けた。その際こまめに交通機関を使いレストラン、ドラッグストアやスーパーマーケットなども利用したので利用者目線での現地のデジタル決済の状況をご報告しておこう。

 結論から言うと現金を持つ必要性は低かった。昔は財布をズボンのポケットに入れるなとかスリの心配をしたが、今では財布自体が要らなくなっている。

 まず米国への出発前にトリップアドバイザーというアプリを使って事前にホテルやレストランなど訪問先をインプットしておくことをおすすめする。このアプリは日本でも使えるが、米国では利用者数が圧倒的に多いので情報が集積されて利便性が格段に高くなっている。

 例えばインプットしておいたレストランを呼び出すと、現在地点からのタクシーや地下鉄、バスなどを利用しての行き方を時刻表付きでアドバイスしてくれる。

 今回移動手段推薦順位の1番は配車サービスのウーバーテクノロジーズであることが多く、配車到着予想時間と料金が提示される。この場合はネット上のカード決済なので現金は必要ない。

 イエローキャブは後部座席正面にカード決済機がついていて、こちらも差し込んで4桁のコードで簡単に決済ができるので現金は必要がない。バスや地下鉄では、ニューヨークもボストンもそれぞれ交通系カードがあるので、これも到着時に購入しておけば現金は要らない。

 また日本でも導入され始めたが、ドラッグストアなどでは、自分でバーコードを読ませる自動精算システムが多く、ここでも差し込み式のカード精算機が一般化している。その他ドーナツ屋やサンドイッチ屋の少額決済でもカードは一般的になっている。

 ボストン郊外の公共駐車場ではゲートがなく、駐車料金は自己申告制になっていた。駐車場の真ん中にある小さな精算機に、車のナンバーを入力して、自分で1時間と入力する。すると料金は1ドル50セントと出たが、これもカード決済である。

 ニューヨークではNYCフェリーという、新しくできた船会社が便利だが、これも事前登録して乗船時にスマートフォンをワンクリックするだけである。かくして札クリップに数十ドル分の紙幣を挟んでいたが、ホテルでのチップ以外に利用する場所はとうとうなかった。したがってポケットに小銭がたまるということもなくなってしまった。

 さて、こういう話を日本ですると米国は進んでいるなと感心する人も多い。しかしウーバーのサービスが普及していないことを除けば、実はやり方次第で日本でも事情はあまり変わらない。

 筆者はスイカを内蔵したアップルウオッチを使っている。先日、在来線→新幹線→名古屋地下鉄を利用した出張があった。新幹線は「EX」で予約したのでチケットレスである。駅弁を買い、立ち食いきしめんまで食べたが、家を出て以降、財布どころかスマホまでかばんから出すことはなかった。コンビニエンスストアではスイカなど交通系カードが使えるし、最近はクレジットカード決済も5秒もあればできる。ポケットをじゃらじゃらと小銭を探っているよりも早いので、少額なので店に迷惑などということはもはやない。つまりキャッシュレス化は日本でもやればできるのだ。

 ちなみにニューヨークではデジタルデバイド(情報格差)が進み、信用やデジタルリテラシー(知識)がない低所得者層には相変わらず現金が必要なのである。

【プロフィル】板谷敏彦

 いたや・としひこ 作家。関西学院大経卒。内外大手証券会社を経て日本版ヘッジファンドを創設。兵庫県出身。著書は『日露戦争、資金調達の戦い』(新潮社)『日本人のための第一次世界大戦史』(毎日新聞出版)など。