スルガ銀、不適切融資1兆円に 新生銀・ノジマと業務提携で出直し図る
経営再建中のスルガ銀行(静岡県沼津市)は15日、投資用不動産向け融資に関する全件調査の結果を公表した。この中で、書類改竄(かいざん)などの不正や借り入れ希望者の自己資金を水増しする不適切行為があった融資は、総額1兆円規模に上ることを明らかにした。併せて新生銀行や家電量販店のノジマと業務提携で合意したと発表した。
総額1兆7000億円に上る投資用不動産向け融資のうち、不正や不適切行為が発覚したのは6割に相当。「過度な営業実績主義」(有国三知男社長)のもと、企業統治が機能不全に陥った状況が浮き彫りになった。
借り入れ希望者の預金通帳や物件契約書を改竄するといった不正が認定された案件は、金額ベースで5537億円に上る。この8割が問題化したシェアハウス以外での案件だった。不正が疑われる案件も864億円あったほか、融資時に拠出が求められる自己資金を不動産業者が立て替えた不適切行為も4300億円程度あった。
不正に関与した行員を新たに2人を処分し一連の問題で処分された行員は75人になった。別件のデート商法詐欺まがいの行為に関与した1人も懲戒解雇した。
新生銀との業務提携ではスルガ銀が得意とする個人向け住宅ローンなどで、ノジマとはクレジットカードを用いた金融サービスや販促で協業する見込みだ。
この日発表した2019年3月期連結決算は、最終損益が971億円の赤字(前期は69億円の黒字)だった。通期の赤字転落は17年ぶり。2020年3月期は105億円の黒字転換を見込む。
■スルガ銀行の不正融資をめぐる経過
・2018年1月
シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営が頓挫。物件オーナーへのスルガ銀の不正融資の疑いが発覚
・2018年9月7日
第三者の調査委員会が組織的不正と企業統治不全を認定
・2018年10月5日
金融庁が投資用不動産向け融資の新規受け付けの6カ月間停止を命令
・2018年11月29日
スルガ銀が18年9月中間連結決算を一部訂正。最終損失が985億円から1007億円に拡大
・2018年11月30日
業務改善計画を公表。融資資料改竄などに関与した営業担当者らを処分
・2019年4月12日
金融庁の行政処分が解除
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【用語解説】スルガ銀行の不正融資問題
シェアハウス「かぼちゃの馬車」のオーナー向けの融資で、審査書類の改竄(かいざん)などの組織的な不正が横行していた問題。不正は他の投資用不動産向け融資でも明らかになり、創業家出身の岡野光喜前会長らが引責辞任した。金融庁は昨年10月、投資用不動産向け融資の新規受け付けの6カ月停止を命じる重い処分を出した。
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