「春夏サンマ」に不安と期待 不漁深刻 公海漁獲へ通年操業解禁
深刻な不漁を背景に、8~12月だったサンマ漁の操業期間制限が撤廃され、5月中旬に大型漁船が各地から次々と出航した。漁獲量の確保を期待する声がある一方、サンマの旬は脂が乗る秋で、品質や採算面で不安は大きい。「実際に取れた魚を見ないと分からない」と口をそろえる関係者。「春夏サンマ」が食卓を彩る日は来るか。
全国水揚げ量半減
宮城県気仙沼市の気仙沼港で15日、北海道と富山県の大型漁船2隻が住民らの声援を受けて出航した。北海道の第68福神丸船頭の佐藤健二さん(44)は「不安だらけだが、期待していくしかない」と苦笑いした。
サンマは夏に北太平洋北部で成長し、秋ごろ南下して日本近海の三陸沖などに来遊するが、近年は沿岸に来る数が減少。全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)によると、2000年以降は20万~30万トンで推移していた全国の水揚げ量がここ数年は半減している。
漁業者の苦境を受け、水産庁が3月、沿岸に来る前に公海で漁獲できるよう、通年での操業を解禁した。しかし秋を前に、どれだけ取れるかは未知数だ。気仙沼市のある漁業者は「燃料代を考えると、リスクが高すぎる」と出航を見送った。
市場も様子見だ。全国有数のサンマの水揚げ量を誇る宮城県女川町の女川魚市場は当面、春夏サンマの受け入れを見合わせる。
同市場の加藤実社長は「地元の買い受け人は鮮度、脂の質ともに一級品を求めており、『女川ブランド』を守らなければならない。質が良ければ水揚げしたい」と話す。
今年前倒しで出航するのは国内の大型サンマ漁船55隻のうち18隻で、北太平洋の公海で7月下旬まで漁を続ける。洋上でロシアの缶詰工船に販売するのが中心で、国内での水揚げは一部にとどまる見込みだ。
公海に行けない小型船からは「サンマ全体の価格低下につながる」という反発もあり、業界内でも賛否が分かれる。
雇用確保が急務
それでも通年操業に乗り出すのは、漁業者や加工業者の雇用確保が急務だという事情がある。ロシアの排他的経済水域(EEZ)でサケ・マスの流し網漁が16年に禁止され、漁期の5~7月の仕事がなくなったからだ。実際、18隻のほとんどがサケ・マス漁をしていた漁船だという。
気仙沼港から出航した丸中水産(富山県黒部市)の松野均社長は「秋サンマの時期だけの操業で乗組員がついてきてくれるか心配だった」と話す。漁期以外は東京の土木現場でアルバイトをする乗組員もいるという。東日本大震災で漁船1隻が沈み「船を新調しても、秋サンマだけでは食っていけない」と廃業も考えただけに、期待は大きい。
全さんまの担当者は「今回成果が出なければ、様子見の漁業者や市場が離れていく。勝負時だ」と力を込めた。