【試乗スケッチ】ベンツAクラスに高感度な富裕層&女性が飛びつく新基準ディーゼル登場
新型メルセデス・ベンツ「Aクラス」の販売が好調だとの噂は本当なのだろうと、肌感覚でもわかっていた。東京の街中で目にすることが、あきらかに増えたと感じていたからだ。
そんな時、メルセデスジャパンが新たに「A200d」を投入するという情報を入手。最近のAクラス絶好調のからくりがどこに隠されているのかを探るべく、試乗会場へと向かったのである。
「いま注文いただいても…」
試乗会場になった「Mercedes me Tokyo」は、六本木と乃木坂の中間あたりにある。特に夜になると、エネルギッシュな街に変貌する。
そんな街を象徴するように、「A200d」担当者の話にも勢いがあった。新型Aクラスの販売はすでに5000台を売り上げているという。「いま注文いただいても、納車は秋頃になるんです」という勢いだというから嬉しい悲鳴だ。生産が追いついていないほど注文が殺到しているのだ。
Aクラスの顧客には、二つの特徴があるという。ひとつは、他ブランドからの乗り換えだ。古くからのメルセデスファンだけではなく、50%以上が新規ユーザーだというから驚く。
レクサスは相変わらず好調だし、BMWも販売に陰りがあるという話は聞かない。アルファロメオ・ジュリエッタも人気である。とすると、価格的な競争力を失ったアウディあたりのユーザーが流れているのか…。メルセデスにとって新規ユーザーの50%超えは笑いが止まらないだろう。
Aクラスから上級グレードへの乗り換えも期待できる。複数所有へのセールスにも手抜かりはないだろう。エントリーユーザーをAクラスが呼び込んだことは、今後の伸びしろにも影響することを考えれば、ますます笑いが止まらないのである。
ふたつめの特徴は、女性ユーザー比率が高いことである。約25%が、女性だというのだ。しかもその数字は契約名義ベースである。亭主名義で購入していても、「普段は家内の買い物や子供の送り迎えがメインなんです」というユーザーも少なくないだろうから、実際はその数字は跳ね上がる。つまり、新型Aクラスの好調は、新規ユーザー獲得と女性ウケが要因なのである。
コンパクトハッチにも需要
さらに注目したいのは、SUVではなくコンベンショナルなコンパクトハッチであることだ。車高が高いSUV系の勢いは留まるところを知らない。出せば売れるという入れ食い状態だ。だがAクラスはそのジャンルではない。これはまだまだコンパクトハッチにも需要があることを証明している。
そんな中、新たにディーゼルエンジンを搭載した「A200d」を投入するというのだからメルセデスの販売攻勢は増すばかりだ。
搭載するエンジンは、Cクラスに積まれて評判のいい「0M654」型を横置きにリメイクした「OM654d」である。2020年から施行されるという、ますます厳しい環境規制「EUROd NORD」を満たしている。現状ではアルピナとDSあたりしか適合していない基準である。「環境にも優しい」というキーワードは、高感度な富裕層には響く文言である。新規の女性ユーザーがますます飛びつきそうな気がする。
ちなみに、試乗車は入管したばかりの6台のうちの1台だった。公安の認証待ちの状態であり、十分な数が揃っていない。そのあたりの混乱ぶりから想像できるのは、この勢いを止めてはならぬという鼻息の荒さだ。一刻も早く魅力的なモデルを投入することでラインナップを充実させ、さらなる顧客獲得を急ごうとする施策の表れだ。
腰を抜かすほど魅力的
実際に走らせてみると、驚くほど魅力的な仕上がりに腰を抜かしかける。搭載するディーゼルエンジンは、直列4気筒ターボエンジンだ。排気量は2リッターもある。すでに展開済みの1.3リッターガソリンターボよりもパワーもトルクも強化されているのだ。最高出力はガソリンの136psよりも強力な150pを発揮する。発進に特に威力を発揮する最大トルクは、ガソリンが200Nmなのに対して320Nmもある。パフォーマンスは圧倒的なのである。
特にターボの味付けがアグレッシブだから、アクセルをちょっと踏んだだけで急発進する。慣れるまでは、慎重なアクセルワークが必要だろう。
そんなだから、極低回転域だけですべてが賄える。発進はアクセル開度1mmで事足りるし、100km/hクルージング時に回転計に目をやると、針は1300rpm付近をさまよっていた。アイドリング+αで生活できるのである。そんなこともあって、「EUROd NORD」を先取りした環境性能を手にしたのであろう。
個人的には、ジュピターレッドのA200dが気に入った。富裕層の奥様が都会をクルーズする姿が頭に浮かんだ。メルセデスジャパンの笑いは、これからもしばらく止まりはしないだろう。
【プロフィール】木下隆之(きのした・たかゆき)
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。
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