タイで介護のノウハウ伝授 横浜のNGO、高齢者や認知症患者対象
日本と同様に少子高齢化が進むタイで、日本の非政府組織(NGO)が現地の自治体を対象に、高齢者や認知症患者のデイケア施設を運営するためのノウハウ伝授に乗り出した。日本で培われた介護の知識や経験が、タイ社会の福祉向上に貢献している。NGOは、横浜市の「野毛坂グローカル」(奥井利幸代表)。バンコク近郊の中部パトゥムタニ県ブンイトー市との間で2月下旬、デイケア施設の運営協力に関する調印式が行われた。
ブンイトー市は独自予算で3階建てのデイケア施設を建設中で、10月の開所を目指している。理学療法士によるリハビリや高齢者のデイサービス事業、認知症ケアなどを計画し、自治体レベルで運営する施設の先駆けとしたい方針だ。
福祉政策に積極的に取り組む同市は、既に高齢者がダンスや水泳などを楽しむ福祉センターを開設。高齢者介護を進めたい同市と、ノウハウを持つ野毛坂グローカルを、社会福祉学部を持つタイの有名国立大、タマサート大が結び付けた。
野毛坂グローカルは開所に向けて、受け入れる高齢者の健康状態を細かくチェックし、治療やリハビリの必要性を確認する基本動作などを同市職員らに講習。同市の担当者らは日本のケア施設を訪れ、実際の介護の様子も視察した。タマサート大社会福祉学部も協力し、開所後に現場で働くスタッフやボランティアへの研修も行う予定だ。
同市公衆衛生環境局のクワンチャイ・ジャムティム局長は「協力が持続可能な社会の実現を促進し、高齢者のリハビリに寄与するよう期待している」と話す。
タイは60歳以上を高齢者としている。日本で65歳以上が人口に占める割合(高齢化率)の27.7%(2017年)より低いが、タイ政府によると、人口に占める60歳以上の割合は18年で約16%。30年には約26%、40年には約32%になるとの民間団体の試算もある。
野毛坂グローカルの奥井代表は「将来的にはタイと日本の自治体同士が、福祉について学び合う場をつくりたい」と抱負を語った。(バンコク 共同)