【近ごろ都に流行るもの】ファンデや色つきリップ…メンズコスメの売れ行き好調 理想の男性像が多様化
官民挙げて「ダイバーシティ(多様性)社会」が推進されるなか、男性がカッコイイと思う男性像も多様化。メンズコスメの売れ行きが好調だ。市場規模は東日本大震災が発生した8年前から右肩上がりで、今年は1183億円の予測(富士経済調べ)。肌や髪のお手入れは当たり前。メークの壁を軽々と超える男子が表れ、肌色補正のファンデーションや色つきリップが売れている。背景には、若い男性の外見に対する悩みや理想の深化があった。(重松明子)
ツルンとした白い小顔に赤みを帯びた唇…。取材先で出会った20代前半の男性美容師の“美貌”に見入ってしまった。透明感のある肌。実はBBクリーム(美容成分入りの薄付きファンデーション)を使っているという。若いし、素顔で十分じゃないの? 「ニキビ跡がコンプレックスで…。若いなりの悩みがあるんです」
男子の見た目への繊細さは、メンズ化粧品の老舗「マンダム」が1月に発表した15~29歳の男性を対象にした意識調査にも顕著に表れていた。
人に見つめられても自然体でいられる「視線耐性」が「ある」と答えた男子は36・1%にとどまり、「ない」が63・9%に上った。視線耐性がない理由の過半数が「自信がない」。自信がない要素の1位が「肌」(42・9%)で、2位が「顔立ち」(42・6%)だ。コミュニケーション力(40・2%)や収入(33・4%)などの内面的資質より、外見が“男の自信”を左右している側面がうかがえる。
全国119店舗を展開する「ロフト」では、男性用化粧品の売り上げが7年連続増加している。今年4月19日~5月6日も前年同期比115%と好調だ。
ロフト広報・渉外部の高橋祐衣さんは「メーク需要のベースは『すぐにきれいになりたい』という意識。スキンケア需要は50代男性にまで浸透している」と話す。
10~20代の男性が憧れる男性像の変化を受けて、新しい化粧品も開発されている。4月に登場したメンズコスメ「リップスボーイ」の長島幹孟プロダクトマネジャーは、「今はギラギラした男らしさではなく、ナチュラルでスッキリと清潔感ある男性がカッコイイ。その理想に、ケアとメークで近づくことができます」と語る。
4月に行われたロフトのメンズコスメ発表会では、男性モデルを使った同ブランドのデモンストレーションが披露された。
BBクリーム(2376円)でベースを作り、クマやくすみをコンシーラー(2160円)でカバー。アイブロー(2160円)で眉バランスを整え、暖色系のリップ(1944円)で血色感をプラス…。確かにより小ぎれいになったが、筆者の目には整いすぎて中性的に見える。白肌に赤リップの「オルチャン(美女、イケメン)メーク」を施した男性K-POPアイドル風か?
続いて登壇したのは、Jリーグ・浦和レッズ所属のプロサッカー選手で男性化粧品会社「ハルテンジャパンリミテッド」CEOでもある槙野智章さん。鍛え上げた太いふくらはぎを誇示するようなピチピチのスーツ姿で、自社商品を熱っぽくPR。ワイルドな“男気”を振りまいていた。
百貨店で大手の化粧品が売れる女性用とは違い、男性用は巧みなウェブ戦略で存在感を示す新興勢力が目立つ。代表格は、野口卓也CEOが平成25年に24歳で立ち上げた「バルクオム」だ。
創業以来、毎年倍々ペースで売り上げを伸ばし、EC(電子商取引)による定期購入者は2万人を突破。取り扱い店舗も800軒に増えた。ホームページでは、シンプルでスタイリッシュな化粧品をバスルームで扱う俳優・窪塚洋介さんのセクシーな映像とともに、大胆な初回割引価格を打ち出し、合理的な今どきの心理に訴えている。
「ウェブ完結型のブランド構築戦略が、美意識の高いユーザーにマッチしたと考えています。服装の清潔感と同様、スキンケアも男性のライフスタイルの一部」と野口さん。学生を中心に広がり始めた男性のメーク文化については、「就職後も持続するかが定着のカギ」とみている。
前出のロフトの高橋さんによると「母親が、息子の肌質に合った化粧品を探しに来店する姿も見られます」とのこと。
女性の理解と応援も後押し。男らしさの固定観念にとらわれることなく、それぞれの個性と趣味嗜好(しこう)を生かして「より美しく」を目指すメンズたち…。この現象「男性解放」といえるかも!?
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