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アメリカで実感、集客に欠かせない施設の充実

 毎年2月下旬から米アリゾナ州フェニックスにはメジャーリーグ15チームが集い、スプリングトレーニングキャンプ(通称カクタスリーグ)開催で多くの人々でにぎわう。筆者はスコッツデール市でキャンプを張るサンフランシスコ・ジャイアンツに同行させていただき今年で早や4シーズン目を迎えた。(帝京大学教授・川上祐司)

 経済効果3.5億ドル

 スプリングトレーニングキャンプとはいえ各チームにとっては重要なマーケティング戦略の一翼を担う。各チームが使用するホームスタジアムを含めたベースボールファシリティー(施設)は各行政の資産であり、使用および営業権をチーム側に譲渡し両者一体となったマーケティングを行う。カクタスリーグによる経済効果は約3億5000万ドル(約378億円)を計上する。ジャイアンツの場合、スコッツデール市のこれらのベースボールファシリティーの使用に当たり2025年まで契約を締結しているが、その金額は決して巨額ではない。

 さらに、このうち20%をフィールドメンテナンス費などに充当することになっている。実際、グラウンドメンテナンス業務は同市パーク&レクリエーション局の職員たちが従事する。ジャイアンツからのさまざまな高い要求に応えながら最高のフィールドコンディションを保持している。

 同市は今年度約5000万ドルの予算を計上してメインスタジアムのリノベーションを実施する。その資金は同市を訪問する観光客からのツーリズム税から充当されることになり同市民からの負担はない。来季のカクタスリーグに合わせて現在急ピッチで工事が進んでいる。

 カクタスリーグ終了後、今年はテキサス州アーリントンを訪問した。2017年シーズン途中までダルビッシュ投手が在籍したテキサス・レンジャーズのホームスタジアムであるグローブライフ・パークも1994年設立で既に老朽化が指摘されていたが、隣接する広大な土地に新グローブライフ・フィールドが2020年シーズンに合わせて建設が進んでいた。

 夏にはセ氏40度を超えるテキサスにとって屋根付きのスタジアムが地元ファンにとってはうれしい話であろう。建設費10億ドルのうち半分を行政が負担する。もちろん住民投票による承認済みであり、2%のホテル利用税、2%の売上税、5%のレンタカー税、およびチケットから充当される。また保険会社グローブライフも25年間2億7500万ドルのネーミングライツ契約を既に締結済みでありレンジャーズの収入となる。

 一方で旧グローブライフ・パークは20年春に復活を果たすアメリカンフットボールのプロリーグXFLのホームスタジアムとして使用されることが既に決定している。この両スタジアムのすぐ近くに威風堂々と君臨する元祖、NFL(ナショナル・フットボールリーグ)の人気チーム、ダラス・カウボーイズのホームスタジアムであるAT&Tスタジアムを含めたこれら3つのスポーツファシリティーの中心には「TEXAS Live」なる商業施設が既に営業を開始している。年間を通じてプロスポーツゲームが開催されるこの一帯も地元ファンにとどまらない多くの人々でにぎわうことが容易に想像できる。

 米との差は開く一方

 わが国もスポーツファシリティーは単に観戦だけにとどまらず多様な世代が集う地域の交流拠点への変革に向けて法律、予算や税制を総動員するとの動きがある。しかし、その拠点は25年までにわずか20カ所。この規模ではスポーツ先進国アメリカとの差は開くばかりである。改めてプロスポーツとスポーツファシリティー機能についての理解が必要である。そんな中、小職研究室はNPO法人で、地元総合型地域スポーツクラブ「はちきたSC」(東京都八王子市)、行政との間で新プロジェクトを立ち上げる予定である。

【プロフィル】川上祐司

 かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭を執っている。著書に『アメリカのスポーツ現場に学ぶマーケティング戦略-ファン・チーム・行政が生み出すスポーツ文化とビジネス』(晃洋書房)など。54歳。大阪府出身。