神奈川発 輝く

生産者や従業員が幸せになる仕事を「チョコレートデザイン」

 「チョコをツールとして、幸せを生み出す瞬間をつくるのが好き」。そう語るのは、横浜に本店を構えるチョコレート店「VANILLA BEANS(バニラビーンズ)」を運営する「チョコレートデザイン」の八木克尚代表(43)だ。川崎店と合わせて年間約7万人が訪れる人気ブランドで、今年3月には鎌倉店がオープン。「カカオ豆をつくる生産者も、店で働く従業員も、全員が幸せになれるビジネスをしている」と八木代表は話す。

 プレハブ小屋から

 看板商品のチョコレートサンド「ショーコラ」や、常時全20~30種のフレーバーがあるタブレットチョコレート(板型チョコ)などが店頭に並ぶ。パッケージデザインにもこだわっており“人にプレゼントしたくなる”ようなデザインを意識したという。世界各国で開催されているチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」の本場・フランスのパリ会場には、3年連続で出店しており、神奈川県内の全3店舗に、世界中からファンが集まる。

 八木代表は生まれも育ちも横浜。夢をパティシエと定めたのは12歳のときだった。20歳で菓子専門学校を卒業し、菓子店で働きながら、「20代で自分の店を持つ」という目標をかなえるべく、2000年4月、自身が23歳のときに起業。楽天市場のインターネット通販を通じ、チョコレート菓子を中心とした洋菓子販売を1人で始めた。自宅の庭に2坪のプレハブ小屋をつくり、中にパソコンとIH調理器など最低限の設備を入れ、その中で調理から梱包(こんぽう)、出荷まで全てを行った。

 当時を「孤独だった」と八木代表は笑って振り返るが、メルマガを通じて客とやり取りをするなど、パティシエ自身が製造だけでなく販売までこなすのは「やりがいがあった」と話す。03年に現在の看板商品となる「ショーコラ」を開発。インターネット販売で続々とファンを増やし、14年に地元の横浜にみなとみらい本店をオープンさせた。

 業界の常識を変える

 製品全てに、フェアトレードで仕入れたカカオ豆やチョコレートを使用。フェアトレードとは、発展途上国などで生産されている原料を適正な価格で継続的に購入する取引のことだ。

 「商品がたくさん売れたら、その分、多くのフェアトレードカカオ豆やチョコレートを輸入できる。そうすれば、農園にお金を落とすことができ、生産者も幸せになれる」と話すように、同社の事業は“ソーシャルビジネス”の側面を持つ。「自分の仕事が社会貢献につながっていると思うと、社員も誇りを持って働ける」と、働く環境づくりにも力を入れる。

 一般的に、多くの菓子店の従業員は長時間労働を強いられる。しかし、同社では残業をなくし、有給の消化率はほぼ100%となっている。「パティシエという職に憧れを持って業界に入った若者たちが、労働環境に疲弊して離れていく現状を変えたいと思った」と話す。同社は菓子業界の常識を変える“ベンチマーク企業”としての役割も目指している。

 今後は、海外にも商品を広めたいという。店名には「お菓子づくりに欠かせないバニラビーンズのように、人々に欠かせない存在になりたい」という願いが込められている。常に挑戦を続ける1人のパティシエは、チョコレートで世界中に幸せの輪を広げようとしている。(浅上あゆみ)

【会社概要】チョコレートデザイン

 ▽本社=横浜市磯子区岡村4-26-4(045・750・2630)

 ▽設立=2000年3月1日

 ▽資本金=300万円

 ▽売上高=10億3000万円(2018年6月期)

 ▽従業員=70人

 ▽事業内容=主にチョコレートを使用した洋菓子の製造と販売