金融

米国発の金利低下、日銀板挟み 迫られる厳しい判断

 米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利下げ観測を背景にした米国発の金利低下で日本銀行が板挟みに陥りそうだ。金利低下による景気刺激を優先すれば金融機関の収益力悪化など大規模金融緩和の副作用が拡大し、逆に金利を上げようと手を打てば日米の金利差縮小で円高が進みかねない。これまで以上に慎重な手綱さばきを求められる。

 日銀は昨年7月から、長期金利の変動幅がプラス0.2%~マイナス0.2%程度の範囲に収まるよう国債売買などの市場調節(オペレーション)で誘導する方針を示している。指標となる新発10年債の終値利回りが今月5日にマイナス0.130%と2年10カ月ぶりの低水準に沈んだ(価格は上昇)ことで徐々に防衛ラインが意識されそうだ。

 長期金利が一段と低下した場合、日銀はどんな手を打つのか。副作用の拡大を防ぐには、金融機関からの国債購入額を減らして金利を押し上げる必要がある。

 ただ、市場ではFRBが早ければ7月にも利下げに動くとの観測が強まり、米国の長期金利も低下している。日米の金利が同時に下がる場面で日本だけ押し上げに動けば、日米の金利差が縮小するとの思惑から円を買ってドルを売る動き強まり円高が進みかねない。

 また、今月末に見込まれる米中首脳会談が決裂するなど貿易摩擦が一層悪化した場合、FRBの利下げが加速し急激な円高になりそうだ。日銀も景気下支えや円高防止のため利下げを含む追加緩和を検討せざるを得ず、副作用は拡大する。

 このため、日銀は副作用への配慮と追加緩和の優先順位を問われる局面に入りそうだ。桜井真審議委員は「どちらを取るのかというジレンマに陥ったとき、バランスを考えなければいけない。大変厳しい判断を迫られる」と指摘している。(田辺裕晶)