物言う株主とプロ経営者 外部目線が全て正しいわけではない
上場企業の株主総会が集中する6月下旬を迎える。それを待っていたかのようにアクティビスト(物言う株主)が企業に圧力をかけ始めた。世界的に著名なアクティビストであるダニエル・ローブ氏は、ソニーに対して半導体部門をスピンオフ(事業の分離・独立)し、エンターテインメント事業に集中するよう求めている。また、旧村上ファンド系のアクティビストファンド「レノ」は不正な施工で揺れるレオパレス21の株式を買い増すなど、動向が注目されている。(森岡英樹)
さらに、総会を控え投資家に議決権行使を促す米大手助言会社のISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)は、日産自動車、野村ホールディングス、武田薬品工業のトップ再任に反対する意向を表明、投資家に同様の行動を促している。また、日産については同じ大手助言会社のグラスルイスもトップ再任に反対している。
こうした物言う株主や議決権行使助言会社の行動は、企業にとって経営に一定の緊張感を与え、かつ、市場を通じ企業経営をより透明性のあるものへと誘導する役割が期待できる。経済がグローバル化する中にあって、これらの存在を抜きにして企業経営は語れないほどの力を持っている。
だが、その一方で、過度な権利行使は、資本の論理を振りかざした経営への介入として違和感を覚えることも確かだ。特に株主利益が極大化することが何にもまして優先されるとする一方的な要求には、経営者のみならず従業員、取引先といったステークホールダー(利害関係者)でなくとも、眉をひそめるのではなかろうか。特に日々の業務に携わる従業員は、物言う株主の要求が、長い目でみれば企業の体力、競争力を減殺させてしまいかねないケースが少なくないことをよく知っている。
同様のことは、企業の立て直しや創業者が招く俗に「プロ経営者」と呼ばれる人材についても当てはまる。何をもってプロ経営者と称されるのかは定かではないが、企業の創業や経営で実績を残し、いろいろな企業から立て直しの依頼を受ける著名人という評価ではないだろうか。MBA(経営学修士)などの企業経営に関する高い資格を有している方も散見される。
しかし、少なからず筆者が見聞きしたプロ経営者と呼ばれる方々の行動が常に正しく、当該企業にとって有益であったというわけではない。最終的に企業を立て直すのは現場の従業員であり、当該企業の本当の業務を熟知しているわけではない外部から招聘(しょうへい)されたプロ経営者は、そうした企業の活力を取り戻す環境整備を行うことにこそ意味があるのではないだろうか。
極論的に言えば、プロ経営者は、従来の慣行などしがらみにとらわれない抜本的改革を断行できる強みを持ち、その結果に伴うリスクを引き受ける存在ということではないかと思う。高額な報酬はそのリスクの受託料のようなものだ。その限りにおいてプロ経営者は改革が終われば、早期に退任するのが筋だ。
企業は株主だけのものではない、ましてや経営者のものでもない。日本経済の父と言っていい渋沢栄一氏は著書「論語と算盤」の中で、「道徳経済合一」を唱え、企業の利益(富)は全体で共有するものとして社会に還元することを説いた。株主総会を前に肝に銘ずるべき言葉だ。
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【プロフィル】森岡英樹
もりおか・ひでき ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。