【中小企業へのエール】IT化と水素活用 今こそ交通インフラ再構築を
先日、先進7カ国(G7)環境大臣会議に原田義昭環境相に随行して欧州に行った時のことだ。久しぶりのパリで目にしたものは、黄色のベストを着たデモ隊が毎週土曜日に街の高級店や銀行を襲撃後の散乱したガラス。しかし、それだけではなかった。(旭川大学客員教授・増山壽一)
それは、5年後に控えたパリオリンピック・パラリンピックを環境に優しいオリンピックにするべく、大改造工事をして結果生じた渋滞。改造のポイントはいかに自動車を削減し、歩行者や自転車などに優しい街にするか。そのために歩道を広げ、自転車専用道をつくっているところだ。
市内の渋滞をよそ目にパリっ子たちは、シェア自転車や電動スケボーというかキックスクーターに颯爽(さっそう)と乗り、車道や歩道を駆け抜け、特に電動スケボーは、いまだに法規制がされていない中、パリっ子たちのなくてはならない交通手段となっている。
町の至る所に電動スケボーが置かれ、利用者は車体のQRコードを読み込み、クレジットカード情報を入れるだけでどこに乗り捨ててもよく、しかも安いのだ。つわものは、1人乗りのはずなのだがカップルで仲良く滑走している。そして夕方になると街中に乗り捨てられているが、翌朝、一台一台にチップでも埋め込まれているのか、その位置情報を基に、朝早起きの高齢者などが、1台ごとに決まった報酬をもらい回収し充電している。新しい物好きのパリっ子のことだからいつまで存続するかと冷ややかに見る向きもある。
しかし20世紀に大きく花開いた自動車中心の文化が、曲がり角に来ている中で、新たな道を模索していることは日本も学ぶべきだ。地上には電動スケボー。空を見上げればドローンが。長距離輸送には水素トラックや水素電車が走っている。そんな社会がもうすぐそこまで来ているような気がする。
これまで平成の間、日本は自動車産業の一本足で何とか繁栄を維持してきた。そして、最近の報道にもあるように高齢化やインフラの未整備などで悲惨な事故は増えるばかりである。
これからは、自動運転、インフラのIT化、水素の活用など日本の総力を結集してワクワクするような交通インフラを再構築する時がきた。
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【プロフィル】増山壽一
ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。56歳。
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