【千葉発 輝く】“落ちない選挙カー”で生き残る千葉の企業 「うるさくない」音響にもこだわり
本業の自動車整備業の技術を生かし食品の調理を行えるキッチンカーや選挙カーなどの特種用途車両や、新型の学校遊具を開発しているのが「永光自動車工業」(千葉市若葉区)だ。デザインだけでなく、音響にもこだわった選挙カーはレンタルした候補者が皆当選することから“落ちない選挙カー”として有名で、今春の統一地方選でも大活躍した。「ものづくりで地域に貢献する」という木俣博光社長(53)の下、独自の高付加価値製品を開発し続けている。
整備工場から脱却
同社は1979年4月に木俣社長の父が創業。2007年11月に木俣社長が跡を継ぐまでは、車検や車両の修理・塗装などを行う一般的な自動車整備工場だった。ただ、少子高齢化に伴うドライバーの減少や若者の“クルマ離れ”もあり、経営は徐々に悪化。大学で情報処理の専門家として教鞭(きょうべん)をとっていた木俣社長が後継者となってまず感じたのは「このままではいずれ会社は立ちゆかなくなる」という危機感だった。
会社を生き残らせるには他の自動車整備業とどう差別化を図るかが課題だった。その結果考えたのが、09年から始めた自動車整備業の技術を生かした特種用途車両の開発・製造。中でも特に人気が高いのが、千葉大、千葉工業大の産学連携で共同開発した独自の選挙カーだ。
科学的なデータを取り入れ外装の色や候補者が沿道からよく見えるようにと座席や照明の配置も工夫した。さらに候補者の演説が遠くまで心地よく聞こえる高品質な音質が特徴だ。「大声で演説してもノイズと感じないように周波数帯域を調整し、聞いた人がうるさいなと感じず、演説に聞き入れるようにした」と木俣社長。軽自動車をベースに改造しているため、細い道にも対応できる。現在は6台を貸し出しているが、こうした工夫が奏功し、この選挙カーをレンタルした候補者が落選しないこともあり、県内だけでなく、東京都を始め全国から予約があるという。
学校遊具も製造
特種用途車両の製造・開発以外に力を入れているのが15年9月から始めた新型学校遊具の製造と開発。17年2月には千葉大との共同開発で次世代うんてい型遊具「ツイスティ」を完成させた。一般的なうんていとは大きく異なるねじ曲がった形状が特徴的だが、過去の遊具事故を分析し安全性に配慮したほか、運動を通じた子供たちの体力向上にも科学的なデータを取り入れて形状を工夫した新型の遊具だ。素材はさびにくいステンレス製で、メンテナンスコストの大幅な縮減にも貢献している。千葉県が独創的な製品を認定する「千葉ものづくり認定製品」に選ばれ、千葉市内の市立小学校や私立幼稚園などに約20基が導入されている。
学校遊具の製造・開発に参入したのは、事故が起きる度に撤去され、年々遊具が少なくなった学校の校庭を目の当たりにしたことがきっかけ。「遊びを通じて子供の社会性や体力向上できるような遊具を作って広められないか」と考え、産学連携での新型遊具開発にこぎ着けた。
家業を継ぐ予定はなかったという木俣社長が同社を率いて10年余りで、自動車整備業から地域に貢献するものづくり企業へと大きく変わった。木俣社長の情熱とモットーの「客よし、店よし、世間よし」の「三方よし」の精神で、千葉から日本全国、さらにはアジアへの進出も視野に、飛躍し続ける。(永田岳彦)
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【会社概要】永光自動車工業
▽本社=千葉市若葉区小倉町1301(043・231・8211)
▽設立=1979年4月
▽資本金=1000万円
▽従業員=51人(正社員のみ)
▽売上高=約6億円 (2019年3月期)
▽事業内容=自動車整備・車検、自動車修理、特種用途車の企画・設計・製作・架装
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