乗るログ

電動化へ邁進するボルボのV60 PHEV 普段使いなら電気だけで十分

SankeiBiz編集部

 今回はボルボ「V60」のプラグインハイブリッド車(PHEV)に試乗した。多用途性に富むステーションワゴンにツインチャージャーエンジンとモーターを組み合わせ、パワーと燃費効率を両立させた“いいとこ取り”のようなモデルだという。2019年以降に発表される全ての新型モデルに電気モーターを搭載すると明言しているボルボ。上級グレードの「インスクリプション」に乗って、彼らが目指す「クリーン」な世界観を体感してきた。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)

ボルボのミッドサイズ・ステーションワゴン「V60 PHEV」
清楚な印象のインテリア。センタークラスターの操作系はほぼタッチパッド式のモニター内に格納している
Bowers&Wilkinsの高級オーディオシステム
虹色に光り輝くオレフォス社製のクリスタル・シフトノブ
ボルボのミッドサイズ・ステーションワゴン「V60 PHEV」
ボルボのミッドサイズ・ステーションワゴン「V60 PHEV」
上品で清潔感たっぷりのインテリア
PHEVなら差込プラグを介した充電が可能
高さのあるセンターコンソールが高級感を演出する
ナッパレザーを使用したリヤシート
後席にはゆったりとくつろげるスペースが広がる
ボルボのミッドサイズ・ステーションワゴン「V60 PHEV」
V60のセンターコンソール。一つひとつのスイッチが宝石のように輝きを放つ
Bピラーに組み込まれた後席用のエアベント
ボルボのミッドサイズ・ステーションワゴン「V60 PHEV」
クラストップの大容量を誇るラゲッジルーム
ボルボ「V60 PHEV」と国立大ホール
ボルボのミッドサイズ・ステーションワゴン「V60 PHEV」
サンルーフ越しに望む「ヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテル」
試乗車は19インチホイールを装着していた
ボルボ「V60 PHEV」
大型モニターを配置した運転席周り
後席のエアコン操作スイッチ。バッテリーはフロアトンネル内に格納されている
メーター類を表示する液晶ディスプレイ
Bowers&Wilkinsの高級オーディオシステムを搭載している
一つひとつのスイッチが宝石のように輝きを放つ
ルームランプも洒落ている
エントリーキー
DピラーはV90よりも立てており、実用性を重視している
「チャージモード」や「ホールドモード」はモニター上で操作する
「T6」とTwinEngineのロゴ
ボルボのミッドサイズ・ステーションワゴン「V60 PHEV」
ファストバック風のV90のリヤ部をV60にはめ込むと、ぎこちなさが出る(上)。下は実用性を重視してDピラーを立てたV60
ボルボ「V60 PHEV」で横浜市内をドライブ
ドライブ日和の横浜みなとみらい地区

 上質なスムーズ感

 信号が青に変わり、アクセルペダルを踏むと、まるで氷上を滑るかのようにスムーズに発進した。耳を澄ませると、電動モーター特有の「キーン」という音がわずかに聞こえる。レスポンスは鋭いが、クルマの挙動に「ブルブル」「ざらざら」といった振動はほとんど見られない。電気とモーターのみを使用する「ピュアモード」を選択しているため、完全にEV走行に徹しているのだ。

 ボルボは自社のプラグインハイブリッド・テクノロジーを「Twin Engine」と呼んでおり、現在はXC90、V90、XC60、V60の4モデルでPHEVを展開している。V60は「T8」と「T6」の2タイプのPHEVをラインアップ。ともに2リッターのスーパーチャージャー&ターボチャージャー付エンジンを搭載しており、電池容量とモーターパワーも同等だが、今回試乗した「T6 Twin Engine」は「T8」よりもエンジン出力が抑えられているという違いがある。

 念のために説明すると、PHEVとは外部電源から充電することのできるHVだ。走行距離の短い通勤程度なら電気のみのEV走行、長距離や高出力が必要な場面ならエンジン+モーターによるHV走行といった使い方が可能で、バッテリーの電力を使い果たしてもガソリンエンジンのみで走行可能。EVにありがちな電池残量を心配する必要もないのだ。

 V60 PHEVはガソリンエンジンで前輪を駆動し、電気モーターで後輪を駆動するAWD車だ。シーンに応じてドライブモードを切り替えることで、2種類の動力源の持ち味を引き出しながら効率的に走ることができるメリットを持つ。V60の各モードの仕様や特徴は下記の通りだ。

  • ピュアモード=電動モーターのみ使用。ゼロエミッションで運転できる電動駆動。
  • ハイブリッドモード=デフォルトのモード。エンジンとモーターを使い燃費を最大化。効率性を高めるためにガソリンエンジンとモーターのどちらか一方、または両方を自動で選択して走行する。
  • AWDモード=路面状況が悪い場合にトラクションを最大化。
  • パワーモード=エンジン(前輪)とモーター(後輪)の双方をフル稼働してスポーティーな走りを実現。アクティブサウンドコントロールがエンジン音を強調。ステアリングとブレーキはダイナミックモードに。

 ボルボ関係者によると、V60のEV走行距離は現実的に30キロほどだという。しばらく横浜市内を走行してみたが、ざらつきのない滑らかな走り、力強い発進加速、そして静粛性の高さなど、EV走行がもたらす快適性は加減速を繰り返す街乗りとの相性も抜群。普段の買い物くらいなら充電せずとも1週間は走れそうな使い勝手の良さも、魅力的に映った。もちろん走行中の排出ガスもゼロだ。ちなみに普通充電器(200V/16A)なら3時間ほどで満充電となる。試乗車のバッテリー容量は30Ahだったが、実は最近になって34 Ahに拡大されたため、航続距離は更に向上しているはずだ。

 エンジンとモーターが絶妙にシンクロ

 遠方へのドライブやスポーティーな走りを望むなら、デフォルトの「ハイブリッドモード」もしくは「パワーモード」走行となる。エンジンとモーターのどちらか、または両方を自動で適宜選択して駆動するシステムで、EV走行よりもダイナミックな走りが可能となる。モーター走行は加速を続けるとやがて“息切れ”する傾向にあるが、ツインチャージャーエンジンとの組み合わせにより合計340psを発揮するT6 Twin Engineは、速度域を問わず圧倒的な加速と伸び感を実感できるほどアスレティックだ。「パワーモード」で踏み込めばエンジン音の主張とともにスイッチが入ったかのように突進するし、反力が増したステアリングや19インチタイヤも相まって、カチッと引き締まったスポーティーな走りも披露する。繰り返すが、ステーションワゴンであることを忘れそうになるほど、かなりダイナミックな味付けになる。「T8」との約70万円という価格差を考えると、筆者は「T6」で十分に満足できそうだ。

 シフトノブを手前に引いて「Bレンジ」に入れるとブレーキ回生が強まり、その後も手前に倒すたびにシフトダウンする。センタークラスターの大型モニターで「チャージモード」を選べばバッテリー残量が80%になるまで充電を続け、「ホールドモード」を機能させれば、後の使用に備えて現在のバッテリー残量を保持する。慣れるまでは頭の中が混乱するが、使いこなせるようになればシーンに合わせてパワー/エコ走行を極めることができそうだ。

 クリスタル製のシフトノブ

 これまで何度か新世代ボルボ車に乗ってきたが、今回の試乗で筆者の目を惹いたのが、スウェーデンの「オレフォス社」が製造するクリスタル・シフトノブだった。PHEVの「インスクリプション」グレードに装備される特別な装飾で、吹きガラス製法によって仕上げまでに15人以上の職人が関わり、世界に一つだけの作品としてすべて手作業で製造されているそうだ。眺める角度によってタマムシやハンミョウのように鮮やかな虹色に輝くなど、全く飽きの来ない美しさに思わずうっとりしてしまった。自分の指紋が映り込むのが嫌で、思わずこまめにクロスで磨いてしまったほどだ。

 実用性の高さは同クラスでもトップレベルだろう。余裕のキャビンスペースはもちろん、ラゲッジもリヤサスの張り出しがないスクエア形状で使い勝手がよさそう。最大積載量は先代比+100リットルの529リットルで、メルセデス・ベンツCクラスエステート(460リットル)、BMW3シリーズツーリング(495リットル)、アウディA4 Avant(505リットル)を上回る。

 Dセグメント・プレミアムステーションワゴンの日本国内シェア(2019年5月YTD)を見るとメルセデスCクラスエステートが約半分の47%と圧倒的人気を誇るが、A4/A4 allroad quattro(16%)、3シリーズツーリング(10%)と比較すれば、同26%で2位につけるV60/V60CCは善戦しているといえる。1ジャンルを切り取って比較したとはいえ、ドイツ勢が大きな壁として立ちはだかるプレミアムカー市場において、ボルボも着実に存在感を示し始めているようだ。

 ちなみにV60 PHEVのベーシックグレード「モメンタム」の車両本体価格は659万円。エコカー減税・CEV補助金を合わせて-45万5000円となり、合計613.5万円となる。対してガソリンモデルのV60 T5「インスクリプション」は599万円で、2台の差額は14.5万円。PHEVがよりハイパワーであるにもかかわらずエコフレンドリーで、(ボルボいわく)バッテリーが車両本体と同等期間の使用に耐えられるように設計されていることを考えると、ユーザーの価値観によっては“お買い得”と言えるかもしれない。

 一言で表すと「クリーン」

 ボルボは2019年以降に発表するすべての新モデルに電動モーターを搭載し、同時に内燃機関(ICE)のみ搭載したクルマの終焉を発表している。すなわち全モデルがマイルドHV、HV、PHEV、EVのどれかになるということだ。人気と実力を兼ね備えたV60のPHEVは「排出ガスを可能な限り低減し、持続可能な社会を目指して取り組んでいく」というボルボの企業理念を強くアピールする有力モデルだろう。

 洗練された上品な内外デザイン、電動化シフトに見える環境意識の高さなど、V60 PHEVを構成するあらゆる要素が「クリーン」という言葉を連想させる。決してユーザーに押し付けることなく、自然とそういう雰囲気を醸し出しているのだ。

 自動車業界では各社が電動化シフトを加速させている。ボルボの動きも現代の流れに乗っているように見えるかもしれないが、実はボルボが電動パワートレーンの開発に着手したのは1970年代のこと。環境に対する長年の想いがV60 PHEVに詰め込まれている。

《ヒトコト言わせて!》

 今回は今年1月に、ボルボのデザイン部門上級副社長でインテリアデザインを監督するロビン・ペイジ氏から直接聞いたコメントを紹介します。

 「ボルボV60はまさにボルボブランドの中心ともいうべきモデルです。美しいプロポーションとスタンスを持ちながらも、実用性と多用途性を実現し、より洗練されたものとなっています」(The V60 really is the central point of the Volvo brand. It is refined, has a beautiful proportion and stance, yet delivers on practicality and versatility.)

 【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。アーカイブはこちら

主なスペック(試乗車 V60 T6 Twin Engine AWD Inscription)

全長×全幅×全高:4760×1850×1435ミリ

ホイールベース:2780ミリ

車両重量:2050キロ

エンジン:インタークーラー付スーパーチャージャー&ターボチャージャー

総排気量:2.0リットル

最高出力:186kW(253ps)/5500rpm

最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1700-5000rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:AWDシステム(エンジン+モーター)

タイヤサイズ:235/45R19

定員:5名

燃料消費率(WLTCモード):12.3キロ/リットル

ステアリング:右

車両本体価格:759万円(税込)