【リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く】あいおいニッセイ同和損害保険・金杉恭三社長(2-1)「事故起こさぬ」念頭に新サービス

 
金杉恭三社長
鶴田東洋彦社長

 少子高齢化と人生100年時代への対応、ESG(環境、社会、企業統治)の推進に加え、米中貿易戦争がもたらす世界景気の減速懸念や英国の欧州連合(EU)離脱問題など国内外に難題が山積する中で令和の時代が始まった。先行き不透明感が漂う中、日本経済・社会はどこに向かうのか。そこでフジサンケイビジネスアイは、鶴田東洋彦社長が企業や研究機関、大学などのトップに課題解決への処方箋を問う企画「リーダーの視点」を開始。次代を切り開くための戦略や社会人生活で得た教訓、転機などを聞く。第1回は金杉恭三・あいおいニッセイ同和損害保険社長。

 --損害保険業界を取り巻く環境変化が加速している。その中で中期経営計画「AD Vision 2021」が2年目に入った。「特色ある個性豊かな会社」の確立に向けて取り組んだ計画の初年度を振り返り、進捗(しんちょく)状況は

 「4カ年計画のうち1年目が終了した。『先進性』『多様性』『地域密着』の3本柱で取り組んでいる。先進性の分野では昨年度、(運転挙動反映型の)テレマティクス自動車保険を業界で初めて発売し、関連商品とあわせて契約件数が10万件(2019年6月末)を突破した。手応えを感じている。多様性では、トヨタ自動車、日本生命保険といったユニークなグローバル企業といろいろな取り組みを行い成果が出ている。また地域密着については、地方創生に関する地方公共団体との連携協定が250超(同5月末)に広がった。初年度はいいスタートが切れた」

 --中計で「これだけは達成したい」ということは何か。また「これは少し手薄だな」と思うところは

 「先進的な取り組みをしている中で、まだまだ良さをアピールできていないと思う。24時間365日事故対応をわれわれは手掛けているが、『他社もやっている』といわれる。しかし、事故受付から相手との交渉、保険金がいくらまで出るといったことまで深夜でも休日でも対応できるのは当社だけ。もっとアピールしないとお客さまに良さを分かってもらえないのではないか。(俳優の)岡田准一氏を起用してプレゼンテーション動画を作り配信するだけではなかなか見てくれない。『保険なんて、どこも一緒だ』という人に、なかなか突っ込みができていない」

 --自動運転技術の進展などで自動車事故は減少していくとみられる。若者の自動車離れも起きている。自動車保険の今後は

 「自動車の事故頻度は10%、つまり10人に1人。1人からすると10年に1度しかない。保険に入っていると事故が起きたときに役立つが、保険料をもらっても10人に1人しか保険金を支払っていない計算になる。一方、テレマティクス自動車保険は事故にかかわらず、日常から事故を起こさないようサービスを提供するという画期的な商品だ。当社は『事故のあとの保険から事故を起こさない保険へ』をコンセプトにテレマティクス自動車保険を商品化した。まさに、これからの自動車保険といえる」

 障害者スポーツ振興へ雇用積極化

 --自動車メーカーは電動化や自動化など、事故を起こさない技術開発を進めている。自動車メーカーとの連携はどのように進めているのか

 「トヨタとコネクティッドカーの開発では、どういう技術やサービスにするのかという当初段階からかかわってきた。コネクティッドカーから送信されるビッグデータを活用して生まれたのがテレマティクス自動車保険だ。トヨタはこうした活用をいろいろな業態に増やしていきたいと考えている。われわれはアイデアを出していく」

 --ここ数年は毎年のように予期せぬ災害が起きている。しかも、どこで起きるかも分からない。被災地への社員の派遣が大変になってくる

 「気候変動の影響は今後、避けられそうにない。また日本は地震大国であり、以前だと5年や10年に一度だった大規模地震も毎年のように発生することが想定される。これまでは自然災害が起きると全国から人を集めて対応する『人海戦術』を取ってきた。しかし臨時的に人を集めて対応すれば、被災されていない地域が手薄になる。臨時的措置が毎年繰り返されることは許されないので、抜本的なオペレーションの見直しが必要だと考えている」

 --具体的には

 「お客さまから事故の報告を電話で受けるためコールセンターに何百人も手配するが、それでも電話を取り切れていない。しかしスマートフォンやパソコンの使い方に慣れているお客さまもいるので、そうした方は自分から情報を入れてもらうと、速やかに対応でき保険金の支払いも迅速になる。今後2年かけてチャンレンジし、今年8月までに自然災害にかけていた業務量を4割削減、来年夏には75%削減できないかと取り組んでおり、災害が起きてもしのげるようにチャレンジしている」

 --インターネット社会についていけない高齢者も少なくない。デジタル化へのケアはどのように考えているのか

 「今までは若い人も高齢者も全てコールセンターに事故を報告してきた。スマホで受け付け可能になれば、若い人は電話からスマホに替える。『電話が通じない』といった状況がなくなる。『通じる』はサービス向上になり、デジタルに弱いからといって劣位とはならない」

 --昨年はパンパシフィックパラ水泳、アジアパラ競技大会で社員が大活躍した。障害者スポーツの振興に注力している理由は

 「パラ陸上の競技大会に応援に行ったとき、スタジアムには関係者の家族ぐらいしかおらずショックを受けたのがきっかけで、社員に応援に行こうという活動を始めた。企業の方々にも会うと、ぜひパラスポーツを応援してください、東京パラリンピックの観客席を満員にする活動に一緒に取り組みましょうと呼びかけている。パラ選手が頑張り、記録が伸びると、競技も盛り上がる。資金面で支援するより観客を動員して駆けつけるほうが価値はある」

 --競技と仕事の両立は大変だ。それでも障害者雇用に積極的に取り組んでいる、

 「障害者アスリートは現在、14人いる。全員が普通の職場で昼間は仕事に精を出し、練習時間が迫っても手を抜くことなく仕事を終えてから練習に行く。競技を辞めてからも仕事を続けたいからで、周囲にもそんな努力が伝わってくる。社員は大いなる刺激を受けている。障害者雇用に取り組んでよかったと心から思っている」

 --今年4月に、マラソン選手の川内優輝選手と所属契約を結んだ

 「3年前に東日本大震災の復興支援の一環として、福島県川内村で始まった『川内の郷かえるマラソン』にスポンサーとして協賛。この大会に川内選手も第1回から参加しており、川内つながりで紹介されたのが始まり。川内選手のマラソンを通じて全国を盛り上げ、地域貢献につなげたいという思いが当社との契約につながった。同マラソンからマラソンキャラバンを展開しており、地方創生に役立てたい」