外国人材、水産加工を下支え 岩手など 被災施設再建で獲得競争

 
岩手県大船渡市の森下水産で働く中国人技能実習生たち=4月

 東日本大震災で人口減少に拍車がかかる岩手県沿岸部。主要産業の水産加工業を支えているのが、外国人技能実習生だ。地域になくてはならない存在となる中、企業が連携して受け入れ態勢を整えようとする取り組みも進んでいる。

 水揚げされた大量のサンマを竜田揚げにするため、女性たちが手際よく裁断機に乗せていく。廊下には、母国から持ってきたお土産だという中国の置物や絵画が所狭しと並んでいた。中国人実習生27人が働く岩手県大船渡市の森下水産。森下幹生社長は「彼女たちなしでは会社が回らない」と言い切る。

 森下水産は震災の津波で工場が全壊。再建を急ぎ、4カ月後に一部再開、翌年にはおおむね復旧した。しかし震災後は急激に人口が減り、働き手の確保が難しくなった。被災した商業施設の再建が進み、働き手の取り合いも起きている。

 受け入れ可能な実習生の数は日本人従業員の数に比例するため、森下社長は「日本人を採用できない分、外国人を受け入れたいのに、できない」とこぼす。新たな在留資格「特定技能」の活用も検討するが、同業での転職が可能になるため「時給の良い所に流れてしまう心配もある」と悩む。

 岩手労働局によると、県内で働く外国人は昨年10月末時点で過去最高の約4500人に上った。震災前の約1.9倍。震災直後は帰国する外国人が多かったが、復興が進むにつれて急増した。6割は技能実習生で、沿岸部の被災地では、ほとんどが水産加工業に従事。ベトナム人が最も多く、中国人が続いている。

 技能習得が名目の実習生だが「出稼ぎ」の意識も強く、森下水産の王穎さん(32)は「日本でお金をため、母国にいる小学生の娘の学費にしたい」と率直だ。

 人手不足が深刻化する中、外国人材の確保に向け、岩手県遠野市や釜石市の水産加工業や建設業など6企業が協同組合を立ち上げた。

 監理団体として実習生を受け入れて会員企業に派遣するほか、ネパールやインドネシアに合弁会社を設立し、現地で日本語などの研修を行う構想だ。特定技能で入国した外国人を支援する登録支援機関にもなっている。

 組合の多田一彦理事長は、十分な研修を受けないまま日本に来て、戸惑う外国人が多いことを懸念する。「受け入れ態勢を整え、外国人に選ばれる環境づくりが必要。労働力としてではなく、お互いの地域づくりに役立てるという感覚が大事だ」と話した。