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マインドセット見直そう

 知財戦略推進事務局・仁科雅弘参事官に聞く

 知的財産戦略本部は価値共創タスクフォースでの議論をこのほど終え、報告書「ワタシから始めるオープンイノベーション」をまとめた。その狙いや活用のポイントを知的財産戦略推進事務局の仁科雅弘参事官に聞いた。

 --本タスクフォースでの議論の狙いは

 「21世紀に目指す社会として当本部は価値デザイン社会を掲げている。昨年、別のタスクフォースで企業が将来の価値を創造するメカニズムを取り上げ、これを構想するための経営デザインシートを考案した。今回は構想したメカニズムを実現する手段としてオープンイノベーションに着目。社会にインパクトを与える成果が日本ではなぜ少ないのかを議論した。だが過去の成功事例や方法論から現状を打開する新たな方法論は見いだせなかった」

 --原因は何か

 「マインドセットにあった。委員の方々が自由で熱い議論を交わした結果、オープンイノベーション推進に関与する経営者、担当者個人、土台となる組織の意識や行動が三すくみ状態にあり、互いに推進できない言い訳を醸成し、互いの活動を牽制(けんせい)していることが分かった」

 --具体的には

 「例えば、経営者は明確な実行意思がなく、変革者となる担当者個人を応援しきれていない。担当者個人はやらされ感があるとか、変革者として自らを貫くリスクを背負うまでに至っていない。企業の組織はコンセンサスの限界を超えて新たな挑戦や変革者を評価し、価値創造を後押ししていない、などだ」

 --内心に関係することは把握が難しい

 「まず重要なのは内発的動機とこれを維持していくことができる環境。われわれは経営者、担当者個人(変革者、支援者)、組織(人事、知財)のマインドや行動の現状がオープンイノベーションの推進に適合的かどうかを分析するための診断シートのひな形を新たに考案し報告書に入れた。診断結果に基づき、どう行動すべきかも示した」

 --未知のことには無意識のうちに保守的になる

 「報告書は、変革者を宇宙人に見立て、彼をどう理解し付き合うか、という話から始まる面白い構成になっている。診断シートもぜひ活用し、結果をわれわれへぜひ還元してほしい。報告書が新たな価値創造実現の一助になればと願っている」(知財情報&戦略システム 中岡浩)