埼玉発 輝く

新札効果 渋沢栄一のうどん好調 新吉

 一万円札の新しい肖像に決まった渋沢栄一(1840~1931年)の出身地、埼玉県深谷市の「新吉」は周辺地域の学校給食を一手に引き受けるなど、地域の最前線で活躍する製麺会社だ。渋沢の残した足跡を地元の活性化につなげようと、深谷市はさまざまな取り組み始めている。その一つが同社の開発した「シルクうどん」などの新商品。渋沢栄一の功績にちなみ、発売と同時に早くも好調な売れ行きをみせている。

 煮ぼうとう名物に

 同社は、ゆで麺や生麺を中心に年間150種類を製造、関東甲信越と静岡の1都10県に麺を卸し、年商約11億円を誇る。

 関東の広範囲に商品を届ける一方、地域に根付いた仕事にも取り組んでいる。県内で8社しかない給食業者のうちの1社として、県北部の小中学校約200校に麺を供給する。「一校一校に対応するのは大変。過疎の学校にも届けなければならない」と語る通り、配送体制が強い企業でなければできない。「うちがやめたら田舎の給食は全滅してしまう。がんばって続けたい」という。

 同社は「煮ぼうとう」を深谷名物にした。煮ぼうとうは名産のネギなどの野菜と幅広の麺を煮込んだ料理。深谷では家庭料理として、「ほうとう」を食べる文化があった。もっとも、「あくまでも家庭の味で、店で出すようなものではなかった」(小内睦夫社長)。それが小内社長の母、政さんの「おいしいし、特徴があるのだから、出せば売れる」という判断で、1988年に商品化に踏み切った。

 発売すると、あっという間に社を代表する商品となり、2000年には、地元で「武州煮ぼうとう研究会」も発足した。山梨との「ほうとう対決」などの取り組みもあって、深谷のほうとう文化は盛り上がり、飲食店のメニューに煮ぼうとうも名を連ねるなど、名物としてのブランディングに成功した。

 シルクパウダー使用

 そして今年、渋沢栄一が一万円札の肖像に決まる。同社は6月、表と裏がピンクと白になった「紅白うどん」をはじめ、大阪紡績(現在の東洋紡)創立など紡績業振興に尽力した渋沢の功績にちなんでシルクパウダーを混ぜた「シルクうどん」や、同市が全国1位の作付面積を誇るブロッコリーを練り込んだ「ブロッコリーうどん」の3種類の新商品を売り出した。

 パッケージには渋沢の顔と「祝新1万円札」の文字。発売から1週間で500件以上の注文が入った。「深谷の人はみな渋沢栄一を心から尊敬している。この商品によって誇りが強まれば」と小内社長。お中元シーズンを迎えて、さらなる人気の拡大に期待を寄せている。

 今後はどう出るか。「有利なのは(新紙幣の発行が)5年先ということ。テレビで紹介されてもブームはすぐ去ることがよくある。長くじわじわとブームが続くように仕掛けていきたい」と、小内社長は世間の流れを冷静に見つめる。

 社長自身、渋沢の功績を記した冊子を執筆するなど、顕彰活動に尽力し、同社のトラックには渋沢の肖像を描き入れるほどの力の入れようだ。渋沢にちなんだ新商品を前に、渋沢への敬意と経営者としての意欲が、熱い口調ににじんだ。(内田優作)

【会社概要】新吉

 ▽本社=埼玉県深谷市高畑173(048・571・0520)

 ▽創業=1918年6月

 ▽資本金=2000万円

 ▽従業員=約120人

 ▽事業内容=ゆで麺、生麺等、麺類の製造販売