もうすぐ夏休み。海外旅行のプランを練っている方も多いはず。今年は8月11日(山の日)をはさんで3連休になるため、長期休暇をとりやすいカレンダーになっている。海外旅行はここ数年、パックツアーではなく、自分の希望を叶える個人旅行が主流になりつつあるのはご存知だろうか。
そんな個人旅行をケアしてくれるサービスが人気を集めている。トラベロコは、海外在住の日本人が、情報提供や相談に応じるなど、旅行者をサポートしてくれるサービスだ。ちなみにロコとは、現地在住の日本人のことである。
現在、世界171カ国、2371都市をカバー。ロコの数は4万6000人を数える。サービス内容としては、現地の案内、ホテルやレストランなどの予約、各種送迎、観光プランの作成、同行アテンド、通訳、アクティビティ体験を始め、多岐にわたっている。
使い方は簡単だ。まず、行きたい旅先のロコを探してオンライン上で質問を投げかける。何回でも無料で質問できるので便利だ。返信があった中からロコを選んでコンタクトをとり、要望を伝えて直接交渉をしていく。ロコは利用者の要望に応じて報酬を提示。合意すれば、申し込む流れになっている。
ロコは詳細なプロフィール(名前、性別、年代、職業、顔写真、使える言語、得意分野など)を掲載しているので、そこから条件に合う人を直接選んでコンタクトをとることも可能だ。
報酬額はロコのスキルにより様々だが、平均価格は以下の通り。現地でのサービスは、1時間3500円から6000円、半日で9000円から2万5000円、1日で2万円から4万5000円となっている。またオンライン上の作業は、翻訳(日英500字以内)1500円、1日観光プラン作成1500円、レストラン予約1500円が相場になっている。支払いはクレジットカードを利用。トラベロコが一時的に支払額を預かり、サービス完了時にロコに支払う。万が一、現地でのサービスが正常に行われなかった場合は、全額返金される仕組みになっている。
旅行者がサービスをカスタマイズ
「トラベロコの利点は、旅行者がサービスをカスタマイズできる点にあります。自分だけの旅行ができるのです。旅行代理店のオプショナルツアーは、あらかじめ内容が決まっているので便利ですが、要らない体験も組み込まれている場合が多いのです」と話してくれたのは、株式会社トラベロコ代表取締役・椎谷豊さん。
「南米旅行中、数日ブエノスアイレスに滞在する予定の方が、現地でタンゴにつきあってくれるロコを募集しました。すると、タンゴを勉強している女性のロコが応答して、初心者でも踊れる場所へと案内しました。食事も含めて1日一緒に楽しく過ごしたようです」(椎谷さん、以下同)
他にも、ロンドン滞在の初日に地下鉄の乗り方を教えてほしいというリクエストもあった。応対したロコは、地下鉄の乗り方だけでなく、街歩きのコツやカフェやレストランの情報も提供。わずか30分で終わったそうだ。こういう短時間の使い方もできる。
「最近はビジネスでの利用が増えています。全体の20%から30%は商用に関することです。海外へ進出する企業が増えていることもあり、現地の事情に詳しいロコに相談したり、サポートを依頼するケースが多いですね」
事例を紹介しよう。
海外の展示会に出店するための通訳や視察、アポイントのサポートもお願いしたいというリクエストには、仕事で日常的に英語を使っている方が応対。視察にも同行。
また、スペインの仕入れ先を訪問したいというユーザーは、英語やスペイン語をほとんど話せないため、現地での送迎と通訳をお願いしたいと要望。スペイン在住20年のロコが経験を活かしてサポートした。
留学の相談も最近は多い。娘がパリの大学へ留学を希望している親御さんが、実際に現地で学校を見学したいとリクエストすると、パリ在住10年、パリの大学を卒業したロコが付き添って見学をし、実体験を含めて相談に乗ったケースもある。
「タイに現地法人を設立したいと考えていた方がいましたが、現地で法人を作った経験を持つロコ5名に会って、方法を聞いていったそうです。その後、視察や具体的な相談もされ、実現に向けて進んでいます。海外進出をサポートするのは通常ですと、専門のコンサル会社や仲介会社ですが、そういった企業に依頼をすると高額な費用が発生してしまいます。でも、トラベロコは個人間のやり取りですので、かなりコストを抑えることができるため、ビジネスでの利用者が増えているのだと分析しています」
ちなみに、ロコは日本生まれ日本育ちの人に限定している。日本の習慣や文化を踏まえたコミュニケーションを大切にしたいからというのが、その理由だ。
現地のプロカメラマンがシーンを撮影
この7月から新しい事業も始めた。現地のプロカメラマンが、旅行中の希望するシーンを撮影する「トラベロコ・フォト」というサービスである。
「以前から、旅先でプロに撮影してほしいという要望が多かったんです。例えばパリで結婚式を挙げたカップルが、記念にエッフェル塔をバックに写真を撮りたいとか、デザイナーが自作の洋服をモデルさんに着てもらい、写真を撮りたいというリクエストがありました。それで7月から本格的に事業として始めたのです。写真を撮るだけではなく、それを一冊のフォトブックにして思い出として残せるサービスになっています」
この夏、海外への個人旅行を予定している方は、出発前に現地のロコに相談してみてはいかがだろうか。街の情報にいちばん詳しいのは、そこに住む人。ガイドブックには載っていない極上の情報が見つかるかもしれない。(吉田由紀子/5時から作家塾(R))