MLBとMGMリゾーツとの提携に思う「スポーツと賭博マーケットとの融合」
アメリカでは1992年に成立した連邦法「1992年プロ・アマスポーツ保護法」により、ネバダ州、モンタナ州、デラウェア州、オレゴン州の4州以外では、スポーツ賭博を禁じていた。それが昨年5月14日、アメリカ連邦最高裁判所が1992年プロ・アマスポーツ保護法は違憲であるとして、「スポーツ賭博の規制は州政府が行うべきである」という判断を下したことによりスポーツ賭博が解禁に向かっていることを、デイリー・ファンタジー・スポーツ(DFS)に関連して昨年紹介した。(GBL研究所理事・宮田正樹)
日本のIR市場参入も
その後、予想通り、スポーツと賭博マーケットとの融合はスマートに進められている。
積極的に動いたのがホテル・カジノ業界の雄、MGMリゾーツ・インターナショナルである。同社は昨年11月27日、米大リーグ機構(MLB)と包括的なパートナーシップ契約の締結を発表し、史上初の「MLB公式エンターテインメント・パートナー」および「MLB公式ゲーミング・パートナー」となった。この契約により、MGMリゾーツはMLBのリーグやチームのロゴの使用やイベント、メディアでの宣伝が可能となる。
またスポーツ賭博を実施するのに欠かせない試合などのデータについてもMLBから配信を受けることができることになった。今回の契約によりMGMリゾーツがMLBロゴなどを使用して宣伝やイベントを行える地域はアメリカだけでなく、日本も対象となっている
なお、MGMリゾーツは先の連邦最高裁判決以降、プロスポーツとの提携を積極的に推進し、MLBに先立ち米プロバスケットボール協会(NBA)、北米アイスホッケーリーグ(NHL)とも同様の公式契約を結んでいる。
MGMリゾーツは、日本の統合型リゾート施設(IR)市場の参入を目指し、2014年12月に合同会社日本MGMリゾーツと同西日本を設立している。日本において「特定複合観光施設区域整備法(カジノを含むIR整備法)」が成立したのが昨年7月20日であることから考えても、その先見性と行動力のすごさがうかがい知れる。
今年、7年ぶりで開催された日本でのMLB開幕戦の冠スポンサーを務めたのが、日本MGMリゾーツだったことを記憶している人はどのくらいいるだろうか。アメリカのIR大手は、このように既に日本市場への進出を着々と進めているのだ。
合法化で収益11億ドル
MGMリゾーツは、リーグとしてのMLBのみならず、各チームとの提携も進めており、今年3月には、ボストン・レッドソックスと複数年の公式スポンサー契約を結び、同社がチーム史上初の「公式・独占的リゾートカジノ」となったと発表している。カジノがMLBやチームの公式スポンサーになる日がくるとは誰が想像したであろうか。
ゲーム産業団体・アメリカン・ゲーミング・アソシエーションによると、1992年プロ・アマスポーツ保護法の撤廃(あえて言うと「スポーツ賭博合法化」)により、MLBだけでも、広告費6400万ドル(約68億5000万円)、スポンサー料6200万ドルなど、スポーツ賭博運営企業とデータ配信会社から計1億5400万ドルもの収益がもたらされるという。
また、合法化が各州で進めばその収益は11億ドルに達するだろうとも予測している。
このような賭博産業とプロスポーツの融合が、八百長の火種になるのでないかという懸念はスポーツ業界にも共有されてはいるものの、この様子ではスポーツ賭博の解禁の流れは止まらないものと思われる。
日本においては、IR整備法の果実なるものがMGMリゾーツのようなアメリカのIR大手に蚕食されるだけの結果となること、そして、プロスポーツと賭博の融合が瞬く間に進んでいくことが危惧される。
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【プロフィル】宮田正樹
みやた・まさき 阪大法卒。1971年伊藤忠商事入社。2000年日本製鋼所。法務専門部長を経て、12年から現職。二松学舎大学大学院(企業法務)と帝京大学(スポーツ法)で非常勤講師を務めた。