高論卓説

沖縄でコンビニ戦争勃発 セブン初進出 単独出店に勝算は

 セブン-イレブン・ジャパンは7月11日の「セブン・イレブンの日」に沖縄に初進出した。これでセブンは全国47都道府県に出店し、最後のピースを埋めたことになる。今回出店したのは那覇市内を中心にした14店舗で、県内の有力企業、金秀本社や沖縄ツーリストなどにも協力を仰ぎ、南部から北上。2020年からは沖縄本島全域に出店し、5年間で250店舗を出店していく予定だという。

 「沖縄はコンビニになじみがあり利用者が多い上に、インバウンド需要も増えている。大きな可能性のある地域だと思っている」(セブン関係者)という。

 しかしその一方で沖縄は四方海に囲まれた離島。隣県から集中出店して攻め上がるドミナント戦略はできない。しかも沖縄のコンビニは現在、沖縄ファミリーマート(325店舗)とローソン沖縄(232店舗)が市場を二分している。

 「コンビニの店舗を経営するのに必要な立地は1店舗当たりの商圏に利用者が2000人いるかどうか。沖縄本島の人口が128万人。多くても640店舗が上限で、セブンが250店舗を出店しようとすればお互い食い合いになる」(大手コンビニ幹部)

 この戦いにセブンは勝たなければならない。しかしコンビニ業界の間では「沖縄は地元企業が圧倒的に強く、県外からの進出が難しい」(沖縄に詳しいコンビニ関係者)というのが常識となっている。

 「沖縄は本土とは違う。商品開発にしても、地元商品の調達にしても、店長やアルバイト社員の募集にしても地元企業の協力なしにはできない」(同)

 事実ローソンは1997年に単独で沖縄に進出したが、苦戦を強いられ、10年後の2007年に沖縄の大手スーパーチェーン、サンエーと共同出資でローソン沖縄を設立したことで息を吹き返したという経緯がある。沖縄で最大の店舗数を誇るファミマは最初から地元の百貨店グループ、リウボウと手を組み共同出資会社として1987年に進出、挫折することなく成果を上げている。

 しかしセブンは、アンケートで本土の味に期待している人が全体の65%もいるという結果を受け、これまで通りの単独での出店を決め、「セブン-イレブン・沖縄」を設立。2018年7月に浦添市に自前の弁当や総菜の工場を、11月にうるま市にスイーツ工場を建設。弁当・総菜工場の運営はこれまでセブンの総菜を作ってきた埼玉県に本社を置く武蔵野グループが担い、スイーツ工場は東京に本社のあるフリジポートが運営する。地元限定商品の独自開発にも自信をのぞかせる。

 「セブンはこれまで地方のエリアごとにその地域に密着した商品を開発し、急成長を遂げてきた歴史がある」(セブン広報担当者)と語り、オープンとともに沖縄限定商品13品を販売した。

 さらに沖縄でも人手不足は深刻な問題となっているが、3月から全国で随時導入が始まっている什器、さらに沖縄が初となる自動釣銭機などを全店に導入。1日に4時間(223分)の省人化が可能になるという。

 果たしてセブンはファミマ・リウボウ連合、ローソン・サンエー連合を向こうに回してどこまでシェアを伸ばしていけるのか。沖縄でのコンビニの熱い戦いが始まった。

【プロフィル】松崎隆司

 まつざき・たかし 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は『東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』など多数。埼玉県出身。