高論卓説

中国、進む「下沈市場」開拓 地方3線都市、消費活発で存在感増す

 最近、中国の経済に対してマイナスのイメージが広がっている。今年に入ってからは新車販売台数の下落が顕著で、確かに6月の販売台数が前年同月比9.6%の減少と、12カ月連続での下落となっている。

 さらに2018年の下半期から「BAT」と呼ばれる中国IT業界トップ3からその関連会社で人員削減や給与の下向き調整が行われ、昨今の米中貿易戦争である。

 周知の通り、現時点ではこれ以上の悪化は避けられたが、それも今後どう転ぶか分からない。一時的に収まっていた「中国経済崩壊論」が、また少しずつ首をもたげているような印象さえ受ける。しかし、こうした部分で中国経済が「限界」と結論付けるのは早計であるような気がする。

 当社(トレンドExpress)のクチコミデータバンク「トレンドViewer」に登録されている日本商品を「買った」というクチコミ件数は、18年上半期が447万318件だったのに対し、19年上半期は600万件を超えている。前年同期比で34%増となった。

 同様に「買いたい」クチコミ件数も18年上半期の約310万件に対し、19年上半期が約580万件と倍近い伸びとなり、日本商品に限ったことながら、彼らの消費意欲そのものにブレーキがかかっている気配は見えないのである。

 6月14日に発表された19年1月~5月期の社会消費品小売総額も16兆1332億元で、前年同期比8.1%増と、増加率は若干の下落が見られるものの、依然、成長段階にあると認識していいように思える。

 この現象を読み解く一つが6月18日のEC(電子商取引)商戦「618」である。今年の商戦終了後の速報を見てみると、6月1日から18日のネット通販大手、京東集団(JDドットコム)のオーダー金額は2015億元(約3兆225億円)と前年同期比26%強の伸び。全てのプラットフォームを合わせた総額も3180億7500万元と11.8%増となっていた。

 その商戦後の国内の報道やシンクタンクの調査リポートに現れたのが「下沈市場が盛況」という言葉。下沈市場とはいわゆる地方市場のことだ。社会消費品小売総額も北京では毎年5~6%、上海でも毎年7~8%の伸びだが、下沈市場よりも若干上に位置する四川省成都市や湖南省長沙市では、毎年10%を超える伸びを見せているのである。

 アリババグループの19年アニュアルリポートを見ると、同社運営のECサイト・タオバオでは18年4月から19年3月までの1年間で1億人もの新規ユーザーを獲得しているが、その77%が下沈市場、すなわち3線都市以下の住民なのである。

 しかし戦略的に中国地方都市開拓に動く日本の企業は、決して多くない。もちろん今後、新たな変化が生まれるかもしれない。

 しかし、気を付けなくてはいけないのは、国土も人口も日本の10倍の規模を持つ「中国の経済」の実態を正しくつかむためには、見る者がその視野を、日本を見るときの10倍にまで広げる必要があるということであると思う。

【プロフィル】森下智史

 もりした・さとし 中国トレンドExpress編集長。1998年2月から2015年5月までの17年間、中国・上海に滞在。上海では在留邦人向けのフリーペーパーの編集・ライター、産業調査などに従事。帰国後の18年1月に日中間の越境EC支援会社トレンドExpressに入社し、現職。