【乗るログ】葉山で無料貸出中 ラッピングされたVWのEV「e-ゴルフ」の正体
今回の【乗るログ】は、長引く梅雨の中休みを狙いすましたかのように、貴重な快晴に恵まれた神奈川県葉山町が舞台。自然豊かなこの町に、無料で借りることができるフォルクスワーゲンの電気自動車(EV)「e-ゴルフ」があるという。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)
葉山の海岸線をドライブ
雨模様の東京駅からJR横須賀線に乗ること約1時間、神奈川県の逗子駅に到着した。こちらは一転、抜けるような青空が広がっている。今日のパートナーはVWのe-ゴルフ。これから向かうのは三浦半島の“西海岸”に位置する葉山町だ。
100%EVのe-ゴルフに乗って、まずは「かながわの景勝50選」にも選ばれている長者ヶ崎の岬を目指す。スタート地点の逗子市からわずか10分程度で葉山町に入り、国道134号線を経由して海岸沿いをなぞる県道207号線を走る。この辺りは所々道幅が狭く、路線バスも容赦なく対向してくるが、全長4265ミリ×全幅1800ミリのボディサイズであれば、それほど神経を使うことなく“いなす”ことができる。小回りも利くため万が一のUターンも苦にならない大きさだ。
葉山御用邸の正門前で134号線に再合流し、窓を開けて浜風を頬に感じながら白昼のドライブを楽しむ。e-ゴルフは100kW/136PSを発揮する電気モーターを搭載しており、アクセルペダルに力を入れたときの伸びやかな加速感は胸のすくような気持ちよさだ。しずくがスーッと滴るようなスムーズな走りはモーター駆動の魅力の一つであり、加減速を繰り返す場面では、細かいアクセル操作にも素早いレスポンスで応えてくれる。
モーターが余計な振動を発生しないということは、ハンドルや足回りから伝わる不快な入力も少ないということ。もちろん始動時も、エンジンをかけたときに車体を震わすあの「ブルルン」という振動はない。走行中はキャビンの中で宙に浮いているような不思議な感覚だ。とはいえ実際には道路上を運転しているわけで、ソフトなステアリングフィールやペダルを踏んだ時の感触は実に穏やか。モーターの恩恵で静粛性も高く、窓を閉めれば瞬時に静謐な空間に包まれる。
ガソリンモデルとの違いは重心の低さにもある。使用するプラットフォームは同じだが、e-ゴルフは高電圧バッテリーを床下にフラットに収めることで重量バランスの最適化と低重心化を可能にしており、安定性の向上とクラスを超えた快適性を実感することができる。将来的にEV専用プラットフォームの採用が始まれば、さらに磨きがかかることだろう。キャビンスペースもしっかりと確保しており、大人4人がゆったりと座ることができる(※定員5名)。後席も2名乗車ならお互いにまったく気を遣うことなく過ごせるはずだ。
最初の目的地、長者ヶ崎に到着し、駐車場にクルマを停める。やはりというか、その場に居合わせた先客が興味深そうにe-ゴルフをじっと見ている。実は逗子を出発してからここにたどり着くまでに、ちらほらと好奇の視線を感じていた。その理由は、試乗しているe-ゴルフがなかなか派手にラッピングされているからだ。しかも単なるカラーリングだけでなく、サイドやリヤに「e-HAYAMACATION」や「100%EV」の文字が躍っている。知らない人からすると「なんだ、あれ?」となるのだろう。
実は筆者が運転しているe-ゴルフは、葉山周辺の発着ステーションから1日無料で借り出すことができる試乗車なのだ。
1日無料で借りられる
e-HAYAMACATION(e-ハヤマケーション)とは「葉山」と「バケーション」を掛け合わせた造語で、葉山町の住民やこの町を訪れる人に観光の足としてe-ゴルフを使ってもらおうと、葉山町とVWが2018年6月に始めたコラボプロジェクトだ。葉山町役場など合計8か所の発着ステーションにe-ゴルフを配車しており、ウェブから予約すればだれでも簡単に無料レンタルできるのだ。
このコラボは、クルマが主役ではなく、あくまで乗り手のパートナーとしてライフスタイルの一部になることを目指すVWと、個性あふれるライフスタイルを大切にする葉山町が共鳴し合って始まったそうだ。さらに、この町には環境意識の高い住民が多く、環境汚染を減らそうと努力を続ける葉山町にとって、走行中に排ガスを出さないゼロエミッション車のe-ゴルフはまさに最高のパートナーだというわけだ。
この日話を伺った山梨崇仁町長は「葉山は海のイメージが強いかもしれないが、美しい山や美味しい食べ物があることもたくさんの人に知ってほしい」と話していた。環境にやさしいe-ゴルフに乗って、風光明媚な葉山町の魅力を満喫してほしいそうだ。
数時間の滞在ではあったが、筆者も葉山の魅力を味わうことができた。長者ヶ崎から眺める岬や砂浜で戯れる親子と愛犬。挨拶を交わす中年サーファーたち。途中通過した仙元山にはハイキングコースもある。山側に少し走ればアップダウンがあり、下り坂ではe-ゴルフの特徴の一つでもある回生ブレーキを利用して減速エネルギーを充電することもできる。4段階でブレーキ回生の強弱を選択できるので、筆者は急な坂を下るときに、減速レベルとブレーキ回生が最も強まる「B」レンジを積極的に多用した。逆に上り坂ではパワフルなモーターのおかげで軽快な走りが楽しめた。
EV未経験の人にもぜひ
最後の目的地、南葉山の山の上にあるBBQレストラン「THE HOUSE FARM」では、気持ちのいい日差しを浴びながら、町内の老舗牧場・石井ファームから仕入れた「葉山牛」や新鮮な野菜のグリルを堪能した。こちらの葉山牛は「肉が柔らかいメス牛を長期肥育することで『長く飼育しながら旨味を熟成させる』という手法で管理している」(石井ファームの石井裕一代表)そうだ。ここのレストランも発着ステーションのひとつなので、ドライブと食事を兼ねて訪れてみてはいかがだろうか。
ロングドライブはエンジンとモーターを併用するPHEVがお勧めだが、毎日の通勤や買い物など日常的な近距離移動にはEVが向いている。コンパクトで起伏もある葉山町周辺はEVの特性を生かしやすい環境であり、快適なドライブの最適のパートナーとなる。まだEVに触れた経験のない人にとっても、走り味や乗り心地を直接確かめる絶好の機会にもなるだろう。
岬から一望する美しい海岸線や、実際に食べた美味しい食事の写真-。試乗から数日たった今でも、葉山で撮影した写真をスマホで何度も見返している。e-ゴルフと一緒に、葉山でいい思い出が作れたということだ。このプロジェクトは2019年末まで実施中。皆さんもこれを機にEVで葉山巡りをしてはいかがだろうか。
《ヒトコト言わせて!》
フォルクスワーゲン グループ ジャパン広報部「フォルクスワーゲンと葉山町は『個性豊かなライフスタイルを大切にする』という共通の価値観からコラボレーションを行い、昨年より“e-HAYAMACATION”プロジェクトをスタートしています。排気ガスを出さず、エンジン音のない電気自動車e-ゴルフを、葉山町の住民並びに観光で町を訪れる方々にご利用いただくこの取り組みは、海や山など自然豊かな葉山町と調和し、気軽に乗れる“People's Car”として親しまれています」
【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。アーカイブはこちら
■主なスペック(e-ゴルフ)
全長×全幅×全高:4265×1800×1480ミリ
ホイールベース:2635ミリ
車両重量:1590キロ
モーター定格出力:100kW
最高出力:100kW(136ps)/3300-11750rpm
最大トルク:290Nm(29.5kgm)/0-3300rpm
トランスミッション:1段固定式
タイヤサイズ:205/55R16
定員:5名
航続距離:301km
ステアリング:右
車両本体価格:499万円
関連記事