「仮想発電所」が拡大 次世代システムへの投資広がる

 
仮想発電所の仕組み

 点在する蓄電池や太陽光パネルなどの小規模電源を束ねて1つの発電所のように機能させる「仮想発電所(VPP)」の取り組みが拡大している。政府の実証事業にはエネルギー企業以外も参加し、コンビニエンスストアや自動販売機までネットワークの裾野が広がっている。今後の再生可能エネルギーの普及拡大を見据え、次世代システムへの投資が熱を帯びてきた。

 兵庫県尼崎市にある関西電力技術研究所。建屋内の植物工場では、照明などで育てられたレタスが青々とした葉をつける。栽培条件の最適化について関電が研究を進めてきたが最近、照明の強さや時間帯が生育にどう影響するかの実証実験を始めた。電力消費量の多い植物工場が稼働のピークをずらせれば、ピーク時に減らした電気は「電源」とみなせるとみて、ノウハウの構築を図る狙いだ。

 VPPは家庭用の太陽光パネルや蓄電池、電気自動車(EV)といった小規模電源を、モノのインターネット(IoT)などの技術で統合制御する。個々の発電量は小さいが、集まれば発電所のように機能する。電源を持たない店舗や工場などを束ねて一斉に節電させ、余剰電力をひねり出す手法もあり、新たな電源として関心を集めている。

 広がりの背景には再生可能エネルギーの利用拡大がある。政府は現状16%にとどまる電源の再エネ比率を令和12(2030)年までに22~24%まで増やす計画だが、再エネは天候などで発電量が定まらない。火力発電を調整電源に使うと設備利用率が落ちて投資資金を回収できない可能性があり、政府は次世代の調整電源として平成28年度からVPP実証事業を支援している。

 電力大手にとっても、VPPは発電設備の初期投資が抑えられ、今後買い取りが見込まれる太陽光電源を有効活用できる事業として重点を置く。電源開発と鈴与商事は共同出資会社を設立し、横浜市港北区の庁舎に設置した蓄電池を調整電源などに活用する事業を来年から実施する予定。四国電力はボートレース場や大学に設置した蓄電池の充放電で電源を創出する方向で調整している。

 経済産業省によると、太陽光パネルなどVPPに利用可能な分散電源の設備規模は、令和12年に大規模火力発電所37基分に当たる3770万キロワットまで膨らむと見込まれており、最近は蓄電池やEV以外にも制御電源の対象が拡大。これを商機とみる異業種の参入も目立ってきた。

 ローソンは現在、東京電力管内の250店舗でコンビニの空調や照明などを制御して余剰電力を捻出する実証実験を進めている。富士電機は中部電力と自動販売機の照明などを制御する実験を進め、将来的には国内で約213万台分にあたる約20万キロワットの調整電源を生み出す計画だ。

 外資も市場参入に積極的だ。ドイツのVPP大手ネクストクラフトベルケは東北電力と約2年間の協定を結び、保有するVPPシステムを東北電力の実験に提供する。別の欧州電力大手も参入が取り沙汰される。東北電力の担当者は「海外企業の知見と技術も取り入れ、事業化への可能性を高めたい」と話している。(佐久間修志)

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 仮想発電所(VPP)  バーチャル・パワー・プラント(Virtual Power Plant)の略。工場や家庭などが保有する発電設備や蓄電池などを一括して制御することで、発電所と同等な機能を提供する仕組み。アグリゲーターと呼ばれるサービス事業者が電力需要を見ながら、各電源保有者に電力の提供や蓄電池への充放電、節電などを要請。電源保有者は、これに協力することで対価を得られる。