IR基本方針案の公表 自治体「誘致レース」いざ本番

 
米MGMリゾーツ・インターナショナルが大阪・夢洲に建設を目指すIRのイメージ図。タワーホテルに加え和風の旅館も設ける構想だ
米モヒガン・ゲーミング・エンターテインメントが発表したIR構想のイメージ。奥に三角形に並んだ3棟のホテルなどを備える

 統合型リゾート施設(IR)に関する政府の基本方針策定のスケジュール感が明らかになってきたことで、誘致の意向を正式に表明している大阪府・市、和歌山県、長崎県だけでなく、北海道や横浜市なども前向きな動きを見せ始めるとみられる。名乗りを上げる自治体が増えれば、「誘致レース」は活発化しそうだ。

 トップ走者を自負

 IR実施法は国内で最大3カ所のIRを認めている。誘致合戦の「トップランナー」(松井一郎大阪市長)と自他共に認めるのが大阪府・市だ。

 大阪府・市は、大阪湾の人工島で令和7年の大阪・関西万博前のIR開業を目指す。政界を引退した橋下徹氏が知事だった約10年前からIR誘致を提唱し、ギャンブル依存症などへの懸念から他の自治体の動きが鈍い中、着々と準備を進めてきた。近畿圏への経済波及効果を年7600億円と弾き、米大手MGMリゾーツ・インターナショナルなど海外事業者の関心も高い。

 「基本方針が示されれば、すぐに自治体としての方針を決めたい」

 誘致意向を表明していた長崎県佐世保市のIR担当者はこう打ち明けた。同市は、官民が一致協力してテーマパーク「ハウステンボス」へのIR誘致を進めているという“一枚岩”をアピールする。6月に同市で開催したセミナーでは香港系のアゴーラ・ホスピタリティー・グループなど6社が具体的な構想を初披露した。ただ、九州のほぼ西端のため、「交通アクセスが良くない」(市担当者)など課題も多い。

 事業者が前のめり

 一方、他の自治体や事業者も基本方針案の公表後は誘致、進出の是非をより判断しやすくなる。

 「白紙の状態」(林文子市長)としてきた横浜市は、IRの事業性などに関する住民向けの説明会を実施した。横浜商工会議所は7月、市に対して迅速な判断を要請したが、一部では反対も根強く、まとまっていない。千葉市は民間事業者からIRの経済効果などに関する意見募集を始める。東京都も水面下で誘致のメリットとデメリットを見極めているようだ。

 外国人観光客の人気が高い北海道は誘致の判断を明らかにしていないにもかかわらず、事業者が既に進出を表明。米モヒガン・ゲーミング・エンターテインメントのマリオ・コントメルコス最高経営責任者(CEO)は6月の記者会見で、「必ず北海道に進出したい。最初の3カ所に選ばれなくても次の候補地に北海道が選ばれるまで待つ」と並々ならぬ意欲を示した。

 ただ、地元紙の世論調査ではIRへの反対意見が大半を占めているという。米ハードロック・インターナショナルなども進出を表明しており、自治体以上に事業者が前のめりになっている状況だ。

 国土交通省は7年ごろの開業を目指して、全国で3カ所のIR候補地を選定する。基本方針案が公表される見通しの今秋以降、自治体と事業者の誘致合戦は激化が予想される。(大坪玲央、永原慎吾)