【リーダーの素顔】三井住友海上火災保険 原典之社長(64) 「デジタル化への対応急ぐ」

 
インタビューに答える三井住友海上火災保険の原典之社長=東京都千代田区(萩原悠久人撮影)

 自動運転車の普及やサイバー攻撃など新たなリスクへの補償が求められる中、三井住友海上火災保険はデジタル化への対応を急ぐ。原典之社長は「競争力の源泉は人材」と述べ、デジタル人材の育成や採用を進める方針だ。近年、積極化させている海外展開もさらに拡大する。

 --ITや人工知能(AI)の進歩で保険業も大きく変わってきている

 「保険業界が始まった約100年前に売り上げの主体だった海上保険は高度経済成長期に火災保険に変わり、自動車の大衆化で自動車保険となった。今後はサイバー攻撃へのリスク対応など新種保険のウエートが大きくなるだろう。この両保険の売り上げに占める割合を現在の約17%から令和3年度に20%へ引き上げる計画だ」

 --リスクの高度化にどのように対応するのか

 「重要なのはデジタライゼーション。お客さまが持っているデータと当社の保険や事故データを組み合わせて分析すれば新たな提案ができる。例えばお客さまの修理データと、それに対する保険金の支払いデータを分析すれば、設備の仕様や修理基準の見直しなどのリスクマネジメントを提案する事業を生み出せる」

 --デジタル化への対応は急務だ

 「データを分析してビジネスに生かすデータサイエンティストを増員する。モノのインターネット(IoT)の先駆者として知られる東洋大情報連携学部の坂村健学部長に講座を開いてもらい、社員がデジタルに親しめる取り組みも開始した。海外のデジタル技術を持つベンチャー企業への投資も増やしていく。また、スマートフォンで保険の募集、保険金支払いまで完結できるノウハウを持つ企業に出資した」

--国内では自然災害が多発している

 「昨年は西日本豪雨などの被害で35万件を超える事故連絡があった。コールセンターがパンクしないよう被災地以外の拠点やネットでの受け付けも強化した。ドローンやAIを活用した効率的な損害調査体制も作る」

 --英損保大手アムリン買収など海外展開も進める

 「海外市場開拓に向けたM&A(企業の合併・買収)を引き続き検討する。人口増加が続くアジアや市場の大きい米国で長期的に成長できるビジネスを求めていく。コンプライアンス(法令順守)やお客さま第一といった価値観を共有できることが重要だ」(西村利也)

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 【言葉】米コンサルタントのジム・コリンズ氏の著書「ビジョナリー・カンパニー」に出てくる「時を告げる預言者になるな。時計をつくる設計者になれ」という言葉に感銘を受けた。カリスマ経営者であるよりも「永続的に繁栄する組織を作ることを肝に銘じている」

 【趣味】週末の休日1日は得意先とのゴルフが入る。「精神状態がスコアに反映されるところが面白い」

 【休日】残りの休日1日のうち半日は会社の書類などをじっくり読む。「休日に読むと、もう一度頭が整理できる」。残り半日はウオーキングなどで過ごし、本屋に寄って気になった本を買う。最近のお気に入りは垣根涼介氏の「信長の原理」

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 はら・のりゆき 東大卒。昭和53年大正海上火災保険(現三井住友海上火災保険)入社。名古屋企業本部長、専務、副社長などを経て、平成28年4月から現職。64歳。長野県出身。