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巨大施設、建設前に利活用計画を問え 自治体と民間の差

 スポーツ庁は3月に国内で大規模なスポーツ施設の大規模改修を含む新築・建て替え構想が87件進んでいるという調査結果を発表した。政府は、多様な世代が集う拠点として、スタジアムやアリーナの整備目標を2025年までに20拠点としており、現状は加速度的に計画が進んでいることがうかがえる。来年の東京五輪の競技会場となる施設を含めて10件ほどが既に設計・建築段階に入っている。(フリーランスプランナー・今昌司)

 負の遺産化を危惧

 しかし、それらスポーツ施設の整備計画が順風満帆かといえば、必ずしもそうとはいえず、逆に1998年長野冬季五輪以降、問われている負の遺産への危惧が見え隠れしている。巨大な施設は、建設された後では後戻りはしない。だからこそ、計画段階で緻密な構想が必要であり、理念やビジョンが明確にあるべきだ。

 現代のスポーツ施設は、耐震などの安全性が問われるだけでなく、大規模災害に対する防災拠点など社会インフラとしての機能性が求められるようになった。また、地域の交流人口の増加や経済の活性化を目的とした都市再開発の中心的役割も期待される。そうした中、過去のスポーツ施設以上に規模が大きいスタジアムやアリーナを待望する声は、施設の建築主であり、地方経済の新たな視点からの活性化をもくろむ自治体からも聞こえてくる。それが87件もの構想を生み出している源泉だ。

 7月に新国立競技場の後利用計画について、陸上競技用トラックを外して球技専用に改修する予定だったのを、トラックを残す方針に転換したと報じられた。理由は、球技専用とした場合、コンサートなどの利用時に芝を痛めてしまうことや、球技専用に改修するための費用が莫大(ばくだい)になることだといわれている。では、陸上競技場としての利活用をもくろんでのことかというと、そうではない。競技運営上必須となるサブトラックも常設する計画はなく、当初議論されていた多様な利活用による収益化も全く具体化されないまま、話が後戻りしただけである。年20億円を超えるとされる維持費を稼ぎ出すすべすら示されていない。

 自治体と民間の差

 プロスポーツでは、最近、民間資金による大規模スポーツ施設の整備計画が具体化している。公共施設としてのスポーツ施設にはない多様な機能を持つ整備計画である。自治体と民間企業によるスポーツ施設整備計画の最大の違いは、事業としての計画性であり、その計画に必要なパートナーの参画のさせ方にある。建てて終わりではなく、建ててからどう使うか、生かしていくか、という発想だ。

 沖縄県沖縄市で建設が進む沖縄アリーナは、Bリーグクラブのホームアリーナになるだけではなく、1万人の収容能力を生かした利活用を建築段階から用意周到に考えていることが、この度発表された運営体制から読み解くことができる。プロクラブである琉球ゴールデンキングスのほか、ソニー・ミュージックエンタテインメント、エイベックスなど音楽業界、さらにはスポーツビジネスにたけた電通が加わった。単に施設の維持管理に重きを置くのではなく、利活用を推進していくためのリソースやノウハウを備えることに重点を置いている。

 87件の大半を占める公共事業に巨額な建設費を投入する自治体は、中長期にわたる事業計画を具体性をもって建築設計以前に立ててほしい。

 そのために最適な運営体制をどう図るべきか、施設に対するニーズの変化への対応をいかに図るべきか、そもそも何を目的として計画は具体化されようとしているのか。87件全ての整備計画において広くオープンに事業の魅力が発信されていくことを望む。

【プロフィル】今昌司

 こん・まさし 専修大法卒。広告会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。16年から亜細亜大経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師も務める。