【5時から作家塾】動画の次はゲーム! アップル参入で注目集まる「ゲームし放題」サービス

 
秋から始まる「アップル・アーケード」

 ディズニーとアップルの参入で、定額で映画やテレビ番組などの動画コンテンツが見放題になる定額動画配信サービス市場が盛り上がりを見せていることを以前書いたが、動画に続きゲーム配信市場も大きく成長しそうだ。

 100タイトル以上の新作を独占公開「アップル・アーケード」

 アップルは3月に、定額のゲームし放題サービス「アップル・アーケード」を、今年秋より世界150カ国以上で提供開始すると発表した。

 アップル・アーケードとは、月々決まった料金を支払うことで(現時点ではまだ料金は発表されていないが)、すべてのゲームが無制限にプレイできるというサービスだ。アップルはコナミ、レゴ、ミストウォーカー、セガなど、12社以上のゲームを提供するとしており、秋のサービス開始時点では、まず100タイトル以上の独占公開の新作ゲームを取り揃えると説明している。つまり、開始時点で同サービスでしかプレイできないゲームを、100タイトル以上用意するという意味だ。

 アップルはここ数年、ゲーム分野に力を入れている。特に注目している(と思われる)のが、拡張現実(AR)を取り入れたゲームだ。近年ではiPhoneおよびアンドロイド用ゲームアプリ「ポケモンGO」が大ヒットしたのは記憶に新しい。7月にはポケモンGOの開発会社であるナイアンテックが、ARゲームアプリ「ハリー・ポッター:魔法同盟」を配信開始している。

 アップルはiPhoneやiPadなどの同社の機器向けにARゲームを開発してもらうために、ARKitという開発プラットフォームも提供している。また一時期は、iPhoneのアクセサリとしてARメガネを開発しているとの噂もあった。

 ゲームに力を入れるのは“当然”

 市場調査会社ニューズーによれば、2019年における世界ゲーム市場の売上は1521億ドルで対前年比9.6%の成長を見込んでおり、そのうち最大シェアとなる45%(685億ドル)がモバイルゲームによってもたらされる見通しだ。なお685億ドルの80%に相当する549億ドルはスマートフォンゲーム売上(残りはタブレット)である。つまり世界のモバイルゲーム売上は、専用ゲーム機用ソフトの売上479億ドル(全体の32%)を大きく上回ると予測されている。iPhoneを売上の柱とするアップルが、ゲームに力を入れるのは当然と言えるだろう。

 そしてアップルが「アップル・アーケード」において視野に入れているのはiPhoneとiPadだけではない。アップルによれば、例えばiPhone上で始めたゲームを、iPad、Mac、Apple TV上でも続けることができる。つまり同社が展開するすべてのプラットフォームで、ゲームがプレイし放題となる。さらに同サービスは、ひとつのプランを家族6人まで共有でき、広告もアプリ内課金もないという。

 新たなサブスク形式の試金石

 定額ゲーム配信サービス、いわゆるサブスクリプション形式そのものは、以前から存在する。例えばマイクロソフトの「エックスボックス・ゲーム・パス」は、月々10ドル程度でXbox向けゲームを無制限でプレイできるサービスだ。ゲームソフトウェア大手のEAやユービーアイソフトも、独自のサブスクリプションサービスを提供している。ただしこれらのサービスは、専用ゲーム機やパソコンを対象としたもので、モバイルゲーム向けではない。つまりゲームを本格的に楽しむハードコアゲーマーが対象なのだ。

 モバイルゲームを楽しむ人々の多くは、気に入ったゲームアプリに時々課金する程度で、それほど多くのお金を費やさない。アップルのアプストアで人気のあるゲームのほとんどが、無料で遊べるものばかりだ(アプリ内課金はある)。

 それだけに、アプリ内課金も広告もないアップルの新サブスクリブション型サービス「アップル・アーケード」が、どれだけユーザーを獲得できるかは注目に値する。定額音楽配信サービス「アップル・ミュージック」では順調に有料会員を増やし、新聞や雑誌などが定額で読み放題となる「アップル・ニュース・プラス」、動画配信サービス「アップルTVプラス」と次々に新たな定額サービスを打ち出しているアップルは、果たしてモバイルゲーム市場で成功を収めることができるだろうか。(岡真由美/5時から作家塾(R)

【プロフィール】5時から作家塾(R)

編集ディレクター&ライター集団

1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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