自動車、円高で先行きに暗雲 1ドル=110円設定多く 為替「悪影響」は7社で5千億円超
米中貿易摩擦や米国の利下げを背景に円高ドル安が進行する中、日本の自動車メーカーの業績に暗雲が漂っている。乗用車大手7社中5社が想定為替レートを1ドル=110円に設定しているが、足元ではこれを大幅に上回る水準の円高ドル安で推移しており、令和2年3月期業績予想の下方修正リスクとなっている。新興国の通貨安を含め、為替の影響は本業のもうけを示す通期営業利益を7社合算で5千億円超下押しすると予想されているが、さらに膨らむ懸念がある。
トヨタ自動車は今月公表した元年4~6月期連結最終利益が過去最高だったにもかかわらず、通期業績予想を下方修正。期初に1ドル=110円に設定していた通期の想定レートを1ドル=106円に変更し、輸出の採算悪化などを見込むからだ。「今後の為替相場を予想したわけではない。足元の状況を機械的に織り込んだ」(幹部)という。輸出規模の大きいトヨタは、対ドルで1円の円高が1年間続けば営業利益が約400億円下押しされる。
一方、他の6社は想定レートを変更しなかった。三菱自動車は1ドル=109円、他の5社は1ドル=110円。今後の円相場の動向にもよるが、為替が業績予想の引き下げ要因になりかねない状況だ。対ドルで円高が進んだのは6月以降のため、4~6月期業績では大きな影響はなかったが、SUBARU(スバル)の岡田稔明取締役は「下期に(業績が)下がる要因としては、為替が一番大きい」と懸念を示す。
4~6月期では対ドル以外の為替影響が業績の下押し要因となった。前年同期は333億円の黒字だった経常損益が13億円の赤字に転落した三菱自の池谷光司副社長は、「為替差損の影響が大きかった」と説明。輸出先である欧州のユーロやオーストラリアの豪ドルに対しては円高になる一方、輸出拠点のあるタイのバーツに対しては円安となり、利益を押し下げたという。スズキも稼ぎ頭であるインドのルピーに対する円高などが営業利益で69億円の減益要因となった。
通期営業利益に与える為替の悪影響は、円高リスクを織り込んだトヨタが3500億円を見込む。ホンダ500億円、スバル148億円などとなっているが、前提になる想定レートを円高方向に見直せば、影響額はさらに膨らむ公算が大きい。4~6月期でトヨタとスバルを除く5社が減益となるなど、各社の業績悪化が鮮明な中、円高が追い打ちをかけかねない状況だ。(高橋寛次)
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