金融

野村などデジタル化転換、「スマホ証券」活況

 スマートフォンに特化して株式を売買できるサービス「スマホ証券」が活況だ。手のひらで投資できるスマホならではの手軽さが若者や働き盛りの世代に受け入れられている。対面営業を重視してきた大手もこの流れに乗り始めた。既に多様なサービスが乱立する中、大手がどこまで食い込めるか注目される。

 野村HDがLINE(ライン)と組んだ最大の狙いは、幅広い利用者層だ。野村証券の口座数は533万口座(3月末)に対し、LINEは毎日7000万人が利用する。これまでアプローチできなかった客層の中から、将来的に本格的な資産運用の世界へと進む個人投資家が出てくることを期待する。

 大手では、大和証券グループ本社も来春のスマホ証券の開業を目指す。中田誠司社長は「伝統的な証券ビジネスとはリスク特性が異なるビジネスのピースを育てたい」と語る。

 一方、SMBC日興証券は従来型のオンライン取引のサービス拡充に力を入れる。2月に独自のオンライン媒体「フロッギー」の記事から、関連銘柄を取引できる機能を追加したところ、1ページ当たりの閲覧数は約3倍に増えた。

 大手がデジタル戦略を強化する背景には、対面サービスの限界がある。ライフスタイルの変化や高齢化を背景に、店舗の来客数は大きく減少。一方、ITの進展によってインターネット専業証券やスマホ証券が台頭してきた。

 スマホ証券は既に乱立している。ワンタップバイは2016年6月、日本初のスマホ証券としてサービスを開始。今年4月には、SBIネオモバイル証券がポイントプログラム「Tポイント」で株式を購入できるサービスを始めた。

 大手証券は店舗再編や人員の再配置など、構造改革に取り組んでいる。低金利が続く中、収益力の向上も課題だ。野村HDでデジタル戦略などを担う池田肇執行役員はLINE証券について「1800兆円に上る個人金融資産が貯蓄から資産形成へと流れるムーブメントを起こせるのではないか」と話す。ただ、LINE証券から野村への送客など具体的な構想は明らかにしておらず、今後の戦略は見えないままだ。(米沢文)

 ■主なスマホ証券の特徴

 ≪ワンタップバイ≫

 金額単位での取引が可能。1000円から日米の株式を取引できる

 ≪SBIネオモバイル証券≫

 Tポイントで株式投資ができる。利用料は月額200円(税抜き)から

 ≪スマートプラス≫

 アプリ内のSNSでほかの個人投資家と意見交換ができる

 ≪FOLIO(フォリオ)≫

 「京都」や「コスプレ」など、好きなテーマに沿って選ばれた銘柄に投資ができる

 ≪トラノコ≫

 毎日の買い物のお釣りを投資に回せる

 ≪LINE証券≫

 厳選した100銘柄の中から、1株単位で購入できる。平日午後9時まで即時注文・約定が可能