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自作そろばんで「地頭鍛える」 老舗「ダイイチ」、伝統後世に体験施設

 電子機器の発達と少子化で生産量が激減したそろばんを身近に感じてもらおうと、全国シェア7割を誇る兵庫県小野市で老舗製造業者がカラフルなそろばんを作れる体験施設を設け、人気を集めている。職人の技能継承の取り組みも進め、「読み書き、そろばん」と言われた伝統を後世に残すため奮闘している。

 「竹ひごは色の濃い方が手前。一つ一つ玉を通してね」。110年前から続く小野市の製造会社「ダイイチ」が、2012年に開設した施設「そろばんビレッジ」。

 同社会長の宮永英孝さん(68)が構造や組み立て方を教えると、子供たちが真剣に部品を見つめ手を動かす。軸にする竹ひごを木枠に差し込んでから赤、緑、黄と色とりどりの玉を通し、スムーズに動けば完成だ。浜松市西区の小学1年、岡田春季さん(7)は世界で一つの自作そろばんを手に「楽しかった。おうちに帰っても遊ぶ」と喜んだ。施設には国内外から年約3000人が訪れる。

 小野市は「播州そろばん」のブランドで知られ、ピークの1960年代には年350万丁を製造。だが、時代の変化とともに減少し、現在は年約7万丁にとどまる。

 「若い職人を育てて雇う仕組みがない」と宮永さんは訴える。従来は「玉削り」「玉仕上げ」「ひご竹作り」「組み立て」と4つの工程ごとに業者が分かれていた。それを1カ所に集め、若手が複数の技術を身に付ける「そろばん工房館」の建設を構想する。

 光明は差している。「地頭を鍛えたい」という保護者のニーズを受け、数年前から首都圏でそろばん教室の運営に乗り出す大手学習塾が登場。海外では日本の高度経済成長の素地になったと再評価され、レバノンやベトナムなどでそろばん教育の導入が進む。

 ダイイチには現在、10~50代の職人4人がいる。副工場長は職人歴3年の徳長佑亮さん(22)だ。「小さい頃から親しんできた。もっと良い物を作り、育った小野市に貢献したい」と、これからの播州そろばんを担う覚悟を語った。

【用語解説】そろばん

 竹ひごに刺した玉の位置で数を表し、上下に動かすことで四則計算ができる道具。日本には室町時代に中国から伝来したとされる。江戸時代には学習の基本として寺子屋で教えられた。現在も小学校の学習指導要領で使い方を習うことになっている。国内では主に、兵庫県小野市の「播州そろばん」と島根県奥出雲町の「雲州そろばん」が作られている。