防衛装備品の輸出で日英連携 総合見本市11月開催、アジア市場にらむ
防衛装備品の総合見本市としては国内初となる「DSEIジャパン」が、11月18日から3日間、千葉市の幕張メッセで開かれる。日英両政府の肝煎りによるもので、日本企業では海外の見本市を含め過去最多の約50社が出展を予定する。
製造インフラ魅力
この見本市は、ロンドンで2年に1回行われる世界最大級の防衛装備品と危機管理技術の見本市「DSEI」を日本で開催するものだ。
防衛装備品のアジア市場をにらみ、海外の大手企業と日本企業との間で合弁会社設立や提携などの橋渡しをする場として、英国側が開催を提案。日本側も国内防衛産業の活性化につながるとして受け入れた。
関係者によると、既に複数の海外企業が日本からの輸出を計画しているといい、日本の防衛産業国際化が急速に進む可能性が出てきた。
DSEIジャパンには約150社が出展。日本企業の出展社数が約50社に上ることで、2014年6月にフランス・パリで開かれた見本市「ユーロサトリ」の12社を大幅に上回り過去最多となる見通し。
日本の大手では三菱重工業、IHI、スバル、NEC、メルコ、海外大手では英国のBAEシステムズやロールス・ロイス、米国のロッキード・マーチン、レイセオン、キャタピラー、欧州のエアバスなどが出展する。
英イベント運営会社クラリオン・イベンツ(ロンドン)と日本の同業クライシスインテリジェンス(東京都豊島区)による共催だが、運営には日英両政府が密接に関与している。
英国側は英国製防衛装備の輸出促進を担う国際貿易省が会場に展示ブースを構えるほか、国防省、外務省が支援。日本側も、西正典・元防衛事務次官、岩崎茂・元統合幕僚長、渡辺秀明・元防衛装備庁長官がそれぞれDSEIジャパン実行委員会の委員長、副委員長、委員を務めているのをはじめ、防衛省、経済産業省、外務省が後援している。
海外の防衛大手には、日本企業との間で合弁会社設立や買収、技術提携などを進め、日本を拠点に東南アジアなどへの輸出を実現したいとの思惑がある。海外企業にとって、日本は製造インフラが整備されていることに加え、サプライチェーン(部品供給網)を構築する上で日本企業の持つ優れた素材・加工技術を活用できることが大きな魅力だ。関係者によると、「海外の防衛大手の多くは、アジア向け生産・輸出拠点を開設するとすれば日本しかないと判断している」という。
協業で国内産業活性
一方、日本は国内受注だけでは防衛産業の基盤を維持できないという悩みを抱えており、海外企業との提携や協業が実現すれば、防衛産業の活性化にもつながる。
英国は10月末に迫った欧州連合(EU)からの離脱に際し、世界各国との間で通商や外交関係を強化する「グローバル・ブリテン(世界に開かれた英国)」政策を進めており、特に安全保障分野ではアジア太平洋地域での存在感を高めようとしている。日本でのDSEI開催は英国製防衛装備の供給先を拡大しアジア各国との関係を強化する効果を見込める。
また、関係者は、航空自衛隊の「F2」後継戦闘機をめぐり、最新戦闘機「テンペスト」を持つBAEシステムズと、日本メーカーとの共同開発などを視野に入れ、日本との結びつきを強める思惑もあるとみている。
安倍政権は防衛装備の国際化が日本の外交や安全保障にプラスになると判断し、14年4月に従来の「武器輸出三原則」に代わる新たな指針「防衛装備移転三原則」を閣議決定。一定の条件を付けた上で国産防衛装備の輸出を促進する方向にかじを切っている。(佐藤健二)
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【用語解説】DSEI
英政府が個別に定期開催していた陸、海軍の装備品見本市を1993年に統合。名称は「国際防衛安全装備品」の英文頭文字に由来する。フランスの「ユーロサトリ」と並ぶ世界最大級の防衛・危機管理の見本市だ。現在は民営化されたが、英国製装備のショーケースとしての役割を担っており、装備輸出促進部門を持つ国際貿易省の強力な支援を受けている。今回の日本開催を機に日本と英国で交互に開催する案も浮上している。