LNG供給専用船の建造、国交省が支援 日本の港湾競争力強化へ

 
フィリピンの工場で、液化天然ガス(LNG)バンカリング船に搭載するLNG貯蔵タンクのモックアップ(模型)で作業する人ら(エコバンカーシッピング提供)

 液化天然ガス(LNG)を燃料にする船「LNG燃料船」に横付けして海上でLNG燃料を直接供給できる専用船「LNGバンカリング船」について、国内企業が参加した国土交通省支援の建造工事が10月1日にも始まることが16日、分かった。国交省は全世界で2020年1月から船舶燃料の排ガス規制が大幅に強化されるのを前に、環境問題への対策とともに日本の港湾の国際競争力の強化に向けて、LNG燃料船の燃料補給のための拠点整備を進めている。今回建造されるバンカリング船はLNG燃料と低硫黄燃料油の2つの燃料を供給できる性能を持ち、完成するとアジア初となる。

 国連の専門機関「国際海事機関(IMO)」は20年1月1日から全世界の一般海域で使用される船舶燃料の硫黄酸化物(SOx)の上限を現行の3.5%から0.5%へ引き下げる排出規制を実施する。対応として、硫黄分を含まないLNGをはじめとする代替燃料が求められている。

 運輸総合研究所の調べでは、世界で就航中のLNG燃料船は139隻(昨年9月末現在)で日本では数隻にとどまっている。多くの船舶は従来、割安なディーゼル燃料や重油を使っているが、排ガス規制で燃料のLNG化は世界的に加速するとみられており、早急な対応が求められる。

 バンカリング船は、フィリピンの大手エネルギー会社が、住友商事など国内企業3社が設立した合弁会社から受託し、首都マニラ近郊の工場で建造する。全長95.57メートル。1回でLNGを2500立方メートル供給でき、LNG燃料船1隻がアジアと北米を往復できる量という。

 バンカリング船は完成後、フィリピンから東京湾に航行し、21年3月から岸壁や桟橋に停泊。LNG燃料船に横付けして直接供給する。国交省は、東京湾の拠点整備を目的としたバンカリング船の建造にかかる費用の3分の1を補助する。このほか、伊勢湾・三河湾をLNG燃料補給拠点にするための整備事業も補助制度の対象で、国交省は計7億円を拠出する。

 日本には現在、バンカリング船がなく、タンクローリーなどを使って陸上から供給しているが、バンカリング船を使えば多量の燃料供給が可能となる。将来的には、港に着けた船舶に積み荷作業をしながら、海側からLNG燃料を供給できる可能性もあり、作業時間の短縮化にもつながると期待される。