【リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く】パソナグループ(2-1) 社会問題の解決見据え雇用創造
主婦の再就職を支援するため人材派遣事業を起こしたパソナグループ。就職が決まらない若者、定年退職後も働きたいシニアのための雇用創造、障害者の職域開拓にも取り組んできた。「人を活かす」ための挑戦で、地方創生にもますます力が入る。南部靖之グループ代表は「令和」時代を迎えても企業理念である「社会問題の解決」に挑む。
「1億総活躍」先取り
--1976年の創業以来、挑戦の連続だ
「育児を終えてもう一度働きたいという家庭の主婦に、社会人時代の能力や技術を生かすことができる仕事の場を創りたいと大学卒業直前の2月に創業した。私自身の就職も決まっておらず、社会問題を解決するビジネスとして人材派遣に乗り出した。人材派遣という言葉も、学生ベンチャーという言葉も日本になかった時代で、周囲からは就職もせず仕事をしていない風来坊に見えたようで『何をしているの』という感じだった。父からはただ『ボランティアでは貢献できる範囲が限られる。広く社会に貢献するためには株式会社を設立してビジネスとしてやりなさい』といわれた」
「当時から派遣スタッフの時間給は、正社員の年収を年間の労働時間で割って設定したので1日4時間でも週3日働いても時間当たりの給与は正社員と変わらず、教育研修など福利厚生制度も設けた。『同一労働・同一賃金』は2020年4月から施行されるが、パソナは創業当初から、その考えで処遇した。『主婦に仕事なし、格差あり』の時代に、社会に先駆けて実現した。労働者派遣法が施行されたのは創業から10年後の1986年。定年を迎えたシニアの活用も早く、豊かな知識や経験を持つ中高年を企業はもっと活用すべきだと80年に中高年専門の人材派遣会社を設立し、今の『1億総活躍時代』を先取りした」
--政策が後から着いてくるほど先見性をもつ
「創業以来一貫して新たな雇用インフラの構築に取り組んできたほか、産業構造の変化に伴う人材育成にも注力してきた。社会・経済の流れを読んでビジネスを展開しており、作家の石川好氏から先見性を評価され『パソナは装置会社』とうれしい言葉をいただいた。『パソナが動くと社会が変わる』という意味だそうで、確かに社会に対し常に新しい投げかけをし、新たな雇用インフラをつくってきた」
五輪選手サポートも
--就労を支援する人材も多分野にわたる
「技術者・マイスターからアーティスト、スポーツ選手まで多岐にわたる人材をサポートしてきた。国境をまたいでグローバル人材を紹介し、日本企業の海外進出にも貢献。来年の東京五輪・パラリンピックに関わるボランティアの育成にも携わっている。パソナは東京五輪のオフィシャルサポーターだが、その契約締結式の際、組織委員会の森喜朗会長から『大会終了後もぜひ、選手、コーチ、大会関係者の次のキャリアを一緒に考え、彼らの豊かな人生をサポートしてほしい』と身の引き締まる言葉をいただいた。この期待にきちんと応えていきたい」
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