地銀にマネロン審査の重圧 協会長会見

 
記者会見する全国地方銀行協会の笹島律夫会長(中央)=18日午後、日銀本店

 マネーロンダリング(資金洗浄)対策を審査する国際組織「金融活動作業部会」(FATF)の国内審査を来月末に控え、地方銀行に強い重圧がかかっている。「不合格」とされた平成20年の前回審査の汚名返上には、リスクが高い地銀の対応力向上が不可欠。だが、メガバンクに比べ専門人員や経験の少ない地銀は対応に苦慮しており合格評価の獲得は見通せない。

 「個別の地銀でも外為取引や預金取引の体制を整備するなど審査に向けて準備をしている」。全国地方銀行協会の笹島律夫会長(常陽銀行頭取)は18日の記者会見で述べ、迫るFATFの国内審査に向けて地銀の対策が進んでいることに一定の評価を与えた。

 実際、ここ数年でマネロン対策に動き出す地銀は増え、6月には福岡銀行などがマネロンの疑いが強いと判断した個人口座について、銀行側から取引停止や解約ができるよう預金規定を改定。昨年以降、現金の海外送金を停止する地銀も増えている。

 ただ、29年には愛媛銀行で数億円規模のマネロンと疑われる海外送金を見逃したとされる事案が発生。超低金利下で経営難の地銀が増える中、「対策を熟知した人材がおらず、システム面でも不安が残る」(関係者)のが実態だ。

 今回のFATF審査に対しても「できる対策とできない対策を分け、いつまでに対応するか説明できれば一定の評価は得られる。100点満点を取ろうとしない」(同)対応で臨む地銀が大半とみられる。

 とはいえ、1社でも不十分の烙(らく)印(いん)を押され、国内金融機関の評価が再び下がれば、邦銀の国際取引が制約を受け、海外決済や送金などに影響する恐れがある。

 今回のFATFの審査では各業態の数社が対象となる見通し。審査期間は約3週間で、来年夏にも審査報告書が公表される。