【大学発 日本 人と技術】日本を支える研究活動と技術開発
橋梁補修用シートの研究開発に着手
≪金沢工業大学≫
三谷産業(本社・金沢市)と連携し、橋梁補修・補強工事の工期短縮につながる「高接着性CFRP(炭素繊維強化プラスチック)シート」の研究開発を開始する。
大学院工学研究科高信頼ものづくり専攻の遠藤和弘教授と革新複合材料研究開発センターの和田倫明研究員が研究開発に参画。遠藤教授の知見と同大学COI拠点が研究に取り組むCFRTP(熱可塑性炭素繊維強化プラスチック)のプラズマ接合技術を活用して、高い粘着性を有する補強シートを開発する。
現在の橋梁補修は、補修部に熱硬化性樹脂を用いて炭素繊維を接着する方法がとられているが、樹脂が固まるまでの待機時間が発生するため施工が長期化。結露による水滴の除去にも時間と労力が掛かるといった課題が指摘されている。
高接着性CFRPシートは従来の工法と比べ、大幅な工期短縮とコスト削減を可能する。三谷産業では2024年からの発売開始に向けて研究開発・製品化を進め、発売開始後3年間で84億円以上の売り上げを目指すという。
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カラーフィルターの膜厚ムラ回避策提案
≪東京都市大学≫
工学部機械システム工学科の白鳥英講師は、光学機器に用いられるカラーフィルターの製造時に生じる「膜厚ムラ」の形成機構を解明、ムラを回避・抑制するための指針を提案した。
4K・8Kといった映像の高解像度化の影響もあり、カメラやビデオカメラといった光学機器に用いるカラーフィルターの産業用フィルムにおける膜厚ムラの許容レベルが一層厳格化されている。この膜厚ムラは、製造時のスピンコートによるガラス基盤への塗布工程で放射状に生じるもので、表面張力の分布による「マランゴニ効果」が要因とされている。白鳥講師は実験的な観察と数値解析により、塗膜の構成材料である溶媒の種類・濃度を調整することで同効果が弱まることを解明した。これにより、樹脂との表面張力の差が小さい溶媒種ほど、「膜厚ムラ」が発生しにくいといった材料指針を提案することができ、歩留まり率の向上に大きな貢献が期待される。
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真空展で自動運転バスの体験試乗会を実施
≪埼玉工業大学≫
9月4日から3日間、パシフィコ横浜で開かれた「VACUUM2019真空展 真空でつくる新時代」(主催・一般社団法人日本真空工業会ほか)に、自動運転実験車両(SAIKOカー)と、8月に公開したAI制御による一般公道を走行可能な自動運転バスを出展、連日、約100人の来場者が特別コースを周回し、レベル3による自動運転を体験した。
同大の自動運転車両は、普及が進むAutowareを利用し、AIによる障害物の検知(識別・分類する)機能を強化、ライダーやカメラの画像情報をディープラーニング(深層学習)により、周囲環境をAIで認識して障害物を回避して走行することができる。
ソーラーチームが八王子市長を表敬訪問
≪工学院大学≫
10月にオーストラリアで開催される「2019ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ(BWSC)」に参戦する「ソーラーチーム」がこのほど、石森孝志八王子市長を表敬訪問し、世界大会に向けた活動を報告するとともに、優勝に向けた熱い意気込みを伝えた。石森市長は「全国有数の学園都市であり、ものづくり産業が根付いている八王子から、工学院大学が世界最高峰の大会に臨むことを誇りに思っている。優勝目指して頑張ってほしい」と激励した。
BWSCは太陽光を動力源に約5日間をかけて3000キロを超えるオーストラリア大陸を縦断する世界最高峰のソーラーカーレース。9月下旬から約1カ月間、八王子市役所本庁舎1階ロビーに2019BWSCやチームの活動を紹介するパネルや横断幕を掲示している。
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企業の技術者・研究者対象に機械学習講座
≪豊田工業大学≫
機械学習を軸とするものづくり工学のスマート化に対する研究・教育の一環として、社会人学生などを派遣している会員企業に参加を呼びかけ、「機械学習講習会(初級編)」を初めて開催した。講習会には11社30人の技術者・研究者が参加、プログラミング言語Python、数値計算モジュールNumPy、機械学習ライブラリscikit-learnの解説とこれらを使った機械学習の演習を3日間にわたって行った。
同大は、2003年にコンピュータサイエンスの最先端を目指す米国シカゴ大学の敷地内に豊田工業大学シカゴ校を創設するなど、同分野への積極的な取り組みを行っている。
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開発車両でレース完走し「自工会会長賞」
≪広島工業大学≫
小型レーシングカーの設計・製作・評価・改善を通してものづくりを実践する「学生フォーミュラ日本大会」に参戦した学生チームの車両が、8つの審査項目すべてを完遂・完走して「日本自動車工業会会長賞」に輝いた。
この大会は8月下旬、静岡県・小笠山総合運動公園で5日間にわたり開かれ、同大の学生12人で編成するHITフォーミュラチームなど国内外から約100チームが参加。コスト算出や設計の妥当性、プレゼンテーション能力の3項目の静的審査と、加速やコーナリングなど走行性能、燃費など5項目の動的審査を競った。同大車両が最終走行を終えると後輪ハブシャフトは破損寸前だったが、全項目クリアを果たした27台の中に入り会長賞を受賞した。総合順位は51位だった。チームは2008年に発足し、今年が8度目の出場。
東京ゲームショウに13年連続で出展
≪大阪電気通信大学≫
9月12日から4日間、千葉・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2019」に総合情報学部デジタルゲーム学科・ゲーム&メディア学科が関西の大学として唯一出展した。
今回で13年連続の出展で、今年度はタブレット・スマートフォンゲームを中心に学生作品を展示、来場者は完成度の高さに驚いていた。自分のゲームを遊んでもらい「ダイレクトにレスポンスをもらえる」という成功体験は、学生たちの将来への糧となったようだ。東京ゲームショウ2019への総来場者数は26万2076人で、会期中は国内外、老若男女問わず多くの来場者でにぎわった。
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ワークライフバランス施策を統計的に検証
≪東京理科大学≫
経営学部の野田英雄教授は、OECD(経済協力開発機構)加盟34カ国のデータを用いたクロスカントリー分析によって、ワークライフバランス改善のための施策が実際に人々の生活満足度を高めることに貢献しているのかを、マクロレベルの視点から統計的に検証した。その結果、ワークライフバランスの指標である「レジャーとパーソナルケアに費やす時間」は概してEU加盟国の間で高く、とくにノルウェーとデンマークでは生活満足度のスコアが同様に高い値を示した。
従来のワークライフバランスに関する政策では、女性の懸案事項に焦点が当てられてきたが、本研究の実証分析結果からは、男性が女性よりも「レジャーとパーソナルケアに費やす時間」を必要としており、その生活満足度への影響は男性のほうが大きいことが明らかになった。従来のイメージを覆すこの成果は、日本を含むOECD加盟諸国での労働政策デザインに対し、有益な示唆を与えることが期待される。
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【ガイド】
工学院大学 E-mail:gakuen_koho@sc.kogakuin.ac.jp
芝浦工業大学 E-mail:koho@ow.shibaura-it.ac.jp
千葉工業大学 E-mail:cit@it-chiba.ac.jp
東京電機大学 E-mail:keiei@jim.dendai.ac.jp
東京理科大学 E-mail:koho@admin.tus.ac.jp
東京都市大学 E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp
大阪工業大学 E-mail:kikakuka@ofc.oit.ac.jp
大阪電気通信大学 E-mail:kouhou@mc2.osakac.ac.jp
金沢工業大学 E-mail:koho@kanazawa-it.ac.jp
豊田工業大学 E-mail:s-koho@toyota-ti.ac.jp
広島工業大学 E-mail:kouhou@it-hiroshima.ac.jp
愛知工業大学 E-mail:d-koho@aitech.ac.jp
埼玉工業大学 E-mail:kikaku@sit.ac.jp
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