個人投資家“誕生”から10月1日で20年 「つみたてNISA」で資産形成後押し

 
つみたてNISAの利用状況

 株式売買委託手数料の自由化から、10月1日で20年を迎える。店舗を持たず、手数料を抑えたインターネット専業証券誕生のきっかけとなった。スマートフォンの登場や通信技術の発達で個人投資家が取引しやすい環境は整ってきたが、「貯蓄から資産形成」の流れに勢いはない。若年層を取り込もうと、証券業界は長期投資型の少額投資非課税制度「つみたてNISA(ニーサ)」の普及に注力している。

 日本銀行の資金循環統計によると、個人が今年6月末時点で保有する現預金は前年比1・9%増の991兆円となり、過去最高を更新した。個人の金融資産全体の半分以上は自宅で現金を保管する「タンス預金」か、ほとんど金利のつかない銀行口座への預金の形で休んでいる状況だ。

 株式などは9・7%減の195兆円、投資信託は3・7%減の70兆円と低迷している。貯蓄から資産形成の流れは鈍いままだ。しかも、これから多くの個人金融資産が高齢世代から若い世代へと相続されるタイミングにぶつかる。

 証券業界が望みを託すのは、昨年1月にスタートしたつみたてNISAだ。最長20年間にわたって、毎年40万円を上限に、投資信託の配当や譲渡益が非課税となる。長期・積み立て・分散投資を支援する初心者向けの制度だ。

 金融庁によると、6月末時点のつみたてNISAの口座数は約147万口座で、昨年末時点から約4割伸びた。特に20~30代の伸びが目立つ。「つみたてNISAで個人投資家の裾野がものすごく広がった」と、楽天証券の関係者は話す。

 野村証券は中堅・中小企業に対し、従業員向けのつみたてNISA導入を働きかけている。「売り手市場」で新卒採用に苦労している中堅・中小企業にとって、福利厚生の充実を学生にアピールする材料となるという。

 日本証券業協会の鈴木茂晴会長は「若い世代がつみたてNISAで成功体験を持つことで、会員制交流サイト(SNS)などで話題になって、貯蓄から資産形成の流れが本格的なものになってくるだろう」と期待を寄せている。(米沢文)